アジア大会「金メダル」なのに“1秒も放映されなかった”? 「水球男子」が2連覇したことを知る人はどれほどいるか
日本にはスポーツジャーナリズムがない。それもあって私は「スポーツジャーナリスト」と呼ばれるのを遠慮している。日本にあるのは綺麗事だけを並べてひたすら応援する「応援ジャーナリズム」、あるいは自社の事業を推進するための「宣伝報道」、もしくは不利な情報を遮断する「隠蔽体質」だ。
メディアが報道機関の役割を果たしていないのだ。それを放置していいわけがないと思い、何か行動を起こすべきだ……と痛切に感じ始めた時、Facebookで衝撃的な発信に出会った。書いたのは元水球日本代表監督で現在は日本水泳連盟水球委員長を務める大本洋嗣さんである。以下、引用する。【小林信也(作家・スポーツライター)】
【祝金メダル】あの有名人も応援 アジア大会金メダルの水球男子「鍛え抜かれすぎ」な肉体
優勝したのに報じられなかった
『アジア大会運営で様々なことが言われているが、多くの献身的なボランティアに支えられて水球男子は圧勝の2連覇。女子はペナルティ戦で敗れたが金に値する堂々の銀メダル。最高の笑顔の舞台を作ってくれたボランティアの皆様にあらためて感謝。
報道してもらえなかったが、男子は今大会の男子団体球技で唯一の金メダル(なかなかの快挙なのに)。付け加えると、2016年リオからオリンピックに3大会連続出場しているのも水球、サッカー、7人制ラグビーだけなので、評価されないが今やオリンピック出場の代表的な球技とも言える。
多くの種目が連日放映される中で水球は1秒も取り上げてもらえなかった。寂しいがこれがメディア、世の中の評価。多くのボランティアの方々に「初めて水球を見たが楽しかった」「凄かった」と言っていただけたことがこれからの大きな力になる』
水球は1秒も取り上げてもらえなかった……。この記述に半ば凍りついてしまった。そんなことがあっていいのか。
水球日本代表(ポセイドンジャパン)は予選リーグを3戦全勝で勝ち上がり、準々決勝でシンガポールを32対8、準決勝でイランを26対12、決勝では強豪カザフスタンを24対7で圧倒し、文句なしの優勝を飾った。2016年リオ五輪で32年ぶりの五輪出場を果たしたころから水球日本代表は力をつけ、国際大会で上位に入る活躍を見せるようになった。
その先頭に立ったのがリオ五輪と東京2020で男子代表監督を務めた大本洋嗣さんだ。大本監督(当時)は2メートル級の長身選手たちがゴール前に立ち塞がる、世界の強豪チームをどうすれば突破できるか? 平均身長で遥かに劣る日本が世界の壁を打ち破る一縷の望みを「捨て身のスピード戦術」に託した。相手にボールを奪われたら、水球の定石でいえばすぐ全員がゴール前に戻り防御を固める。大本監督はそれをやめた。守らない。ゴールはキーパーに任せる。幸運にも相手シュートを防いだら、すぐ反撃に移れる体制を敷いて、一気に相手ゴールに襲いかかる、捨て身の戦法を切り札にした。
[1/2ページ]


