【袴田事件と世界一の姉】散歩中に交番前でお辞儀……巖さんが男の人に気を許さない理由

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中高生からの質問

 質疑では、女子中学生から「起訴有罪率が99%になるのはどうしてですか?」という質問が出た。

 白井さんは「いい質問です。第一に、日本の検察は勝つ勝負しかしない。負けるかもしれないと思ったら、そもそも起訴しないんです。第二に、裁判官は、いわば検事の肩を持つような関係性で、検察が起訴したものに無罪と書くのは難しい。もう一つは、報道などで世論が犯人を決めつけてしまい、裁判官もその世論に流されがちになることが理由です」などと答えた。

 男子高校生は「お話では、裁判で裁かれるのは被告人ではなく検察の立証ということでしたが、今やっている裁判は何を裁いているのですか?」と尋ねた。白井さんは「再審請求審といって、再審をするかしないかを決めています。これは、刑事訴訟法などにあまり書かれていない単なる裁判所の手続きで、非公開ではあるものの、一応、裁判所、検察、弁護側の三者で協議をする形で進んでいます。慣例的な手続きなので、明確に法律化すべきという論もありますが、要注意ですね」と答えた。中学生も高校生も質問のレベルが高い。

巖さんの京都旅行

 続いて「わかる会」の恒例として、この1カ月間の巌さんの写真記録を猪野さんがスクリーンで紹介した。「巖さんが急に京都に行きたいと言い出したので、連れて行こうとした。お金を持たせているけど『これじゃ遊べない、足りない』と言ったの、でひで子さんが少し多めに渡していました」。

 といっても、巖さんはその金を自分で使うわけではなかった。ひで子さんと猪野さんの3人で京都まで新幹線で向かい、そこからタクシーで金閣寺を訪れて浜松に戻るだけの超特急の旅だった。猪野さんは「それでも、巖さんが遊ぶなんて言ったことは初めてで嬉しかった」と話し、多くの写真を紹介した。これまで見たことのないような笑顔の写真もあった。

 その日、ひで子さんは「巖は少しずつですけど、最近変わってきましたね。前より表情も柔和になってきたようです」と朗らかに話してくれた。

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