膵臓がんと診断された“ガチな理系”の大学教員が、標準的な化学療法ではなくあえて「治験」を選んだ理由

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どのように探したのか

 大学卒業後、テレビ局で数多くのドキュメンタリー番組や教育番組の企画・制作に携わり、退職後は大学でメディア論について教えてきたY・Jさん(62)。その日常は、2024年7月に膵臓がんの告知を受けたことで大きく変化します。悩みながらも自身の状況を家族や友人に伝え、化学療法による治療を間近に控えていた頃――。これまで想定してこなかった“第3の選択肢”への関心が高まっていきます。【Y・J/大学教員、映像作家】

「治験の情報」がネットで見つかったからといって、すぐに受けられるというわけではない。そもそも、その治験をどこの病院で受けられるのかがわからなかった。

 病院名が必要なのは、現在かかっている主治医にセカンドオピニオンの紹介状を書いてもらわなければならないからだ。

 検索の仕方によってはセットで見つかるものなのかもしれないが、私が見つけた「治験の情報」は治験について書かれているだけで、病院についての情報は何もなかった。もしかしたら親切な主治医に頼めば調べてくれたかもしれない。しかし、どんな病院が実施しているのかもわからない治験を受ける気にはなれず、あらかじめ知っておきたかった。

 意外なことに病院名を調べるのは簡単ではなかった。私の例に過ぎないとお断りさせていただいた上で、どのようにして病院名にたどり着いたのかを記していきたい。

 まず当たり前に思いつく様々なキーワードで検索した。ブラウザを何種類か変えてみたりもした。それでも、目指す治験を実施している病院名はわからなかった。最終的に病院名を見つけてくれたのは妻だ。治験には小さくコード番号が付いていた。その番号で検索することでやっと病院名にたどり着いたのだ。幸いその病院は自宅からアクセス可能なところにあった。

「より不確実性の高い副作用」

 いよいよ次は主治医に話をするのみ――と書くと、治験を受ける覚悟ができているかのようだが、そんな事は全くなかった。標準的な化学療法の「ある程度は見通しが立つ副作用」と、治験の「より不確実性の高い副作用」との間で相変わらず私は迷っていた。

 もう一つ逡巡する理由があった。

 膵臓がんは進行が早いという事実。つまり早く治療を始めたほうが良いに違いない。一方で、治験の可能性を探ろうとすれば、いくつもの手続きを踏まねばならず、どれだけかわからないが時間がかかるに違いない。

 果たして、そんなふうに段取りを増やしていいのだろうか。私はまた悩むことになった。そうして悩んでいるうちにも、Xデーはどんどん近づいてくる。

 がん世界の住人になってからというもの、何をするのも迷ってばかりだった。告知を誰に伝えるのか、友人たちにどう話すのか、仕事を続けても大丈夫なのか、来月の予定を入れて良いのかどうか――。これまで、簡単に最適だと思われる答えを出せていたことが、複雑で悩ましい問題になった。非がん世界に生きていた時と比べて、日常的な意思決定にかかる時間やエネルギーが増大し、それを織り込んで日常生活を考え直さなければならないことが、むしろ最大の悩み事だった。

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