SNSを先取りしていた「週刊新潮」の名物連載「掲示板」…谷崎潤一郎、湯川秀樹、若尾文子の“苦情”や“探し物”も掲載 「人間の頭蓋骨」を探し求めた人物とは?
現在のSNSだった《掲示板》
「人間の頭蓋骨」……なぜ、そんなものを探しているのかというと、
〈勅使河原蒼風(前衛生け花作家) 牛、馬の頭蓋骨は持っているが、人間の頭蓋骨をどなたかお持ちの方はお譲りください。作品の素材として用いたいのですが、ついでにできれば、手の指先の部分もお持ちの方がありましたらお知らせ願いたい。昔のモノでコケの生えているのが欲しいのです。〉
雑誌の誌上で「人間の頭蓋骨が欲しい」と呼びかけるのもすごいが、すぐにOKの返事が来るのも驚きだ。いったい、どういう人からの返事かというと、
〈これは昭和14年、男鹿半島大謀網にかかり上がった無縁仏にて、完全無欠の立派な現物で、浮上した日を命日として、私、毎月命日に供養回向しております。秋田県(略)M寺住職 K・G〉(本文は実名)
「大謀網」(だいぼうあみ)とは、男鹿半島特有の伝統的な大型定置網の漁法。主に真鯛を一網打尽に捕獲するものだが、そのなかに“水死体”があったということらしい。こういう独特の用語や風習が述べられるのも「ご返事」欄の特徴だった。
さらにこの「ご返事」欄には、また別の面白さがあった。返事に対する返事――つまり、「その返事は間違い」という訂正の指摘が、時折あるのだ。
たとえば、吉田健一(作家、英文学家)が、
〈お酒求む。銘柄「勇駒」。昭和29年、河上徹太郎と一緒に佐渡で飲んだこの酒の味が忘れられないので広告します〉
すると、2週後に秋田の人からの返事が載り、〈「勇駒」は元禄年間より当地方の銘柄です〉と、送付の手配をする旨が書かれていた。だがまた2週後、今度は、その返事に対して、
〈吉田健一氏へ――5月1日号の返事にはご不満のことと思います。あなたのおっしゃる「勇駒」は、佐渡郡……氏の造る酒と思います。多分、文春の講演会に来てお泊りの際に飲まれたものかと思います。新潟県佐渡郡(略) K・T〉(本文は実名)
と、“訂正”が入っている。
現在のような、ネットやマスメディアの発達していない時代、毎週の《掲示板》に載る「声」のやりとりは、現在のSNS、まさに「X」(旧Twitter)であった。本年で創刊70年を迎えた週刊新潮で、創刊号から現在まで、ほぼそのままのスタイルでつづいている唯一の連載である。
※引用した記事本文は、主旨を変えない範囲で、一部省略や表記の訂正をしています。
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