がん告知された患者を悩ませる「家族にどう伝えるべきか問題」…それでも一人で告知を受けたことが「悪いことではなかった」と思える理由【第3回】
数カ月後の自分が想像できない
告知を受けた7月末に話を戻す。「がん世界」に足を踏み入れたばかりの私には数カ月後の自分が想像できなかった。抗がん剤の辛い副作用で苦しんでいるかもしれない、これまでのように働けないかもしれない、それどころか歩けないかもしれない、食事も満足に摂れないかもしれない、精神的に不安定になっているかもしれない。そもそも、生きているかどうかもわからない。
この時の私にとって「がんであることを家族に告げる」とは、ありとあらゆる不具合が起こりうると知ってもらうこと。さらに、その上で生活を共有していけるのかどうかを考えてもらうことだった。
最初に伝える相手は妻だった。だが、お世辞にも良い夫婦関係だったとはいえず、言葉を選ばず気楽に話すことはできそうになかった。反応を考え、どう話そうかと考えるだけで、伝えるべき内容の重さが3割増しになった。「一緒に告知を聞けたらよかったのに」と思うが、それができなかったからこうなっただけのこと。そしてこうなった以上、早めに話さないとますます重くなることは明白だった。
自分ががんになったことを、どういう手段で、どういう言葉で家族に伝えるか、これは大きな問題だった。
前提として妻は私の体の変調を知らなかった。日常的にコミュニケーションがあれば何かの予感も伝わっていただろうが、私たちの関係はそうではなかった。
そんな状況でどうやって伝えればいいのか。
電話だろうか。
少し考えたが違う気がした。電話したときに子どもと一緒だったら、そして、がんの話を聞いて妻の顔に困惑の色が出てしまったら、何か良くない影響を周囲に及ぼしそうに思えたのだ。
妻の反応は意外なほど
LINEも同じだ。相手の空間に割り込んでダイレクトに届けるような情報ではない、と思った。結局、二人だけで話したいことがあるとLINEでメッセージを送ることにした。
そして、妻と対面し、言葉で「がんになったこと」と「治療をしなければ数ヶ月の命だと言われたこと」を告げた。
妻の反応は意外なほど冷静だった。予感していたような落ち着いた振る舞いだった。
あとで妻から聞いたところ「二人だけで話したいことがある」という短いメッセージだったことで何らかの病気である可能性を考えたらしい。
正直なところ、妻が取り乱すのではないか、と考えていなかったわけではない。しかし、そのときの夫婦関係から考えれば当たり前の反応とも思えた。結果的に、あまり感情的にならずに、これからのことを話すことができた。
私たちにとって重要なことは「子どもにどう伝えるか」ということだった。
私の考えは「包み隠さずそのまま言う」だった。妻も同意してくれた。二人の子どもは
大学生と高校生だった。自宅のリビングで、少しだけ改まって、意識してさらっと事実を告げた。子どもたちは、少なくとも表面的には冷静に受け止めてくれた。私はその態度をありがたく感じた。
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