「本当にいじめをしたんですか?」問われた小山田圭吾は、何と答えたか 障害のあるアーティストたちとのコラボで奏でた音

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そして障害のあるアーティストたちとの対面

 7月24日、完成した楽曲「Glow Within」を記念して、都内のHERALBONY LABORATORY GINZA(ヘラルボニー ラボラトリー ギンザ)では「Glow Within-Corneliusと13人のアーティストの声」の展示が行われた。初日は報道陣が入り、音源を提供した13人のアーティストのうちの6人も参加していた。アーティストには一人ひとりブースが当てがわれ、その場で制作できるように机と椅子が配置されている。机にはアーティストの解説が記されていて、いつでも制作できるように画材も準備してあった。椅子は本人が普段使っているものを再現してある。なるべく普段通りにいられるようにとの工夫である。午前中、三回に分けて取材陣が入り、その間アーティストや家族、付き添いの人たちは気ままに過ごしていた。用意された机の上で制作をする人もいれば、いつも通りにイヤフォンで音楽を聴いている人、自分の作品を周りの人に自慢する人、様々である。

 取材が終わり報道陣が去った午後一時に、小山田圭吾率いるCornelius制作チームがギャラリーに入ってきた。

 会場に緊張感が走るのは、著名人であること、そしてそれ以上にこの企画の趣旨そのものが緊張をはらんでいるからだ。

 ヘラルボニーの挨拶に続いて、小山田が紹介され、その後アーティスト一人ひとりが自己紹介をした。

 小山田は一人ひとりの紹介に、静かに耳を傾けていた。

 一通りの自己紹介が終わった後、

「小山田さんに何か聞きたいことがあったら聞いてくださいね」

 というヘラルボニーからの言葉があった。

 その日参加していた輪島貫太がスッと手を上げた。そして二、三歩進んで小山田の方に歩み寄った。まるで二人が舞台の上で向き合って立っているような構図である。

「本当にいじめをしたんですか?」

 会場の空気が一瞬で凍りついた。小山田サイドの関係者、その場にいた大人全てが息を呑んだ。小山田はポケットに入れていた手をスッと出して姿勢を正し、貫太の目を見て、

「本当のことと、そうでないことがあります」

 と答えた。

「オリンピックの担当を辞めて、どう思っていましたか?」

 貫太はずっと心に背負っていた荷物を下ろすように、一つずつ質問していった。

 小山田は質問に対して考えながら、貫太にわかりやすい言葉を選んで、ゆっくりと答えていった。

「オリンピックの時は、辛い思いをしたけど、自分を見つめ直すきっかけにもなったし、自分を変えるきっかけにもなりました」

「今は、どう考えていますか?」

「今はもう、気にしていないし、新しいことに取り組んでいます。ヘラルボニーさんと曲を作る今回のことも、楽しかったし、いいきっかけになりました」

 全ての質問を終えてしばらくの沈黙の後、貫太は言った。

「小山田さんは音楽をがんばってください、僕は絵を頑張ります。お話しできて良かったです」

 小山田は照れたように笑った。どこからともなく拍手が湧いて、場の空気が一転した。

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