マイホーム購入直後に地方転勤でもそこそこ幸せ? 就職氷河期世代エリートサラリーマンの鈍感力

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鈍感力でサラリーマン人生を謳歌

 子育ての方はどうなのだろうか。何度も寺山さんと比べるのは申し訳ないが、永田さんが育児にどれだけ参加しているのか気になる。

「今の職場は朝7時に出社して夜8時に帰宅する感じなので、平日はあまり子どもとの時間は取れません。妻はパートで働いているので、昼間子どもたちは保育園に預けています。育児というと、土日に遊びに連れて行くくらいでしょうか。育児や家事はほぼ妻に任せています」

 永田さんの話を聞いていると、マイホームを買った途端転勤になったり結婚すると小遣い制になったりと、サラリーマン、つら過ぎないか? と正直思ってしまった。

 しかし、永田さんからはそんな悲惨さは伝わってこないどころか、サラリーマン人生を楽しんでいるとすら思える。そこで、サラリーマンとして一番つらかった経験を聞いてみた。彼はしばし考え込んだ後、次のように答えた。

「一番つらかったのは売上の大きなコンペで負けたことですね」

 もっと理不尽な体験談が返ってくるかと思っていたのだが、真面目なサラリーマンの回答だった。朝夕のラッシュの時間帯、電車の中で暗い顔やつらそうな表情をしているサラリーマンは多い。しかし、みんながみんな胃の痛くなるような働き方をしているわけではないのだ。

 何より、永田さんはエリートサラリーマン。氷河期世代の勝ち組であり、行動力もある。そして、飄々とした楽観的な性格も影響しているのだと感じた。

 しかし、私の中で若干引っかかる部分があった。永田さんの武器は楽観的な性格というより鈍感力とも言い替えられそうだ。

 客観的に見ると、会社の命令に従い、家族からの圧もある既婚者サラリーマン。鈍感であること、向き合いたくない部分をわざわざ掘り起こさないことが、ある意味幸福感を得られるサバイバル術なのかもしれない。

デイリー新潮編集部

2019年10月25日掲載

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