「有名な暴力団が東京進出して戦争が起きそうなんや……」 昭和の週刊誌記者を翻弄した“タレコミ” 「謎の関西弁の男」の情報を“ホンモノ”と信じてしまった理由とは
税務署はタレコミの宝庫
ほかにも編集部には、さまざまなタレコミがあった。毎週月曜日の夜10時になると、代表電話にかけてくる女性がいた。月曜日は、深夜まで原稿執筆の追い込みがつづくので、多くの記者が在席している。
「内容は、自分が、さる皇族と親しくなった、ついてはその方のふだんの姿がとてもすばらしいので、記事にしていただけないかというのです。話を聞くと実に正確で、ほんとうに皇族と親しいのではと信じたくなるほどでした。しかし、毎週おなじ件で電話してくるので、いわゆる極端な“皇室マニア”だとわかり、誰も相手にしなくなりました」
この種の、マニアが高じて虚実の見分けがつかなくなってしまうひとは、意外と多い。さる有名プロ野球選手と別れた“元恋人”と称する女性が、タレコミ電話をしてきたこともある。このときも、あまりにその選手の成績やそれまでの人生について詳しいので、記者は信じそうになった。だがこれも、マニアが高じた結果だった。
「最終的に記事にはなりませんでしたが、『税務署タレコミ百景』と仮題がついた下調べをしばらくやったことがあります。実は税務署はタレコミの宝庫で、会社を追い出された社員や、経営者に捨てられた愛人が、腹いせに脱税の実態を税務署にタレコミするケースが多いのです。それらを集めて、読み物にできないかという企画でした」(Yさん)
結局、それらしい話はいくらでも集まるのだが、いまひとつ具体的な内容まではわからないので、実現はしなかったという。
「ところが後年、これをネタにした映画が大ヒットしたのです。伊丹十三監督の『マルサの女』(1987)です。ラブホテル経営者(山崎努)に捨てられた“特殊関係人”(「愛人」の税務署用語)が、脱税の事実を税務署に電話でタレコミして、査察に至るという話でした」
この当時のタレコミは、電話である。だがいまはインターネットの時代だ。たとえば国税庁のサイトには〈課税・徴収漏れに関する情報の提供〉というページがあり、〈売上金(収益)や必要経費(費用)について、架空又は事実と異なる経理を行うことで不当・不正に所得金額等を少なく(又は還付税額を多く)申告している納税者に関する情報〉をお寄せくださいと、ていねいな送信フォームが設置されている。
いまではこの種のページは、どこのマスコミのサイトにもある。もちろん、週刊新潮・デイリー新潮も〈情報受付窓口〉を設置している。でもタレコミは大歓迎だが、喫茶店で先に行って大食いするのは、ダメですよ。
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