「多党化時代」突入の日本が“お手本”にすべき国がある 文書のボリュームは自維の20倍…歴史の反省が生んだ超慎重な合意形成
選挙後に時間をかけて連立先を探す
ドイツでは総選挙の「後」に、議会で過半数を得るために「どことどう連立すべきか」を各党が模索するため、新政権の発足まで時間を要する。
そのため世論調査も「どういう連立の組合せを望むか?」「逆に望まない組み合わせは何か?」という質問が定番となっている(図1)。
直近の総選挙は2025年2月に実施されたが、キリスト教民主同盟(以下、CDU)と、その姉妹政党であるキリスト教社会同盟(以下、CSU)及び社会民主党(以下、SPD)により新たな政権が発足したのは5月であった。
裏を返せば、新政権発足まではそれまでの政権が維持されるということでもある。2025年3月には、インフラ・防衛分野に充てる5000億ユーロの特別基金を用意すべく、ドイツ基本法(≒憲法)の改訂すら行われた。
時間をかけて具体的な連立協定を結ぶ
政権発足前には、細部まで詰めた連立協定(Koalitionsvertrag)が策定される。
今回自民と維新の連立政権合意書が8頁約200行の文書だったのに対し、CDU・CSU・SPDの三党が二月超を経て締結した連立協定の文書は実に144頁4500行以上にわたる(図2)。
具体的な政策案は、議論の透明性や政策の実効性を高める。詳細の政策を丹念に合意していくのがドイツ政治の常である。
文書量の通り、ドイツの場合は日本に比べて定量情報が多いなど政策の具体度が高い。ドイツ三党の連立協定文章と自民・維新の連立政権合意書を比較しまとめたものが次に示す「表」である。
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