寝るときは長袖、半袖どちらがよい? 専門家に聞く熱中症対策 「熱中症対策グッズでリスク増大の場合も」

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 6月下旬ですでに30度超え連発……。もはや“悪魔的”と言いたくなる日本の暑さをどうしのぐかは、私たちにとって文字通り死活問題と化している。ちまたに溢れる暑さ対処術。果たして何がどれだけ効果的なのか。夏本番に向けて必読、「科学的に正しい酷暑対策」。【藤井直人/筑波大学体育系准教授】

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 ここ10年ほどの間に、日本列島では「災害級の暑さ」が定着し、夏の酷暑はまさに災厄のように私たちに襲いかかってきています。当然、多くの人が何らかの対策を行い、この暑さをどうにかやり過ごそうと、さまざまな工夫を凝らしていると思います。

 例えば、ネッククーラーや、額などに貼る冷却シート、ハンディー扇風機を駆使して少しでも「涼」を得ようとする。確かに、それらのグッズを使うことによって冷感が得られ、多少なりとも不快感は軽減されるでしょう。しかし、シチュエーションによっては、そうしたグッズの使用が“裏目”に出るケースがあるという事実も、ぜひ知っておいてほしいと思います。

 不快感とは、時に命の危険を知らせてくれるサインでもあります。暑さ対策グッズを使うことでちょっとした涼を得るのと引き換えに、そのサインを消し去ってしまっているとしたら……。それは「暑さから身を守る」という観点から考えると、実はリスクを増大させることになりかねないのです。

〈来たる夏本番に向け、こう警鐘を鳴らすのは、筑波大学体育系准教授の藤井直人氏だ。

 大学在学時には陸上部に所属したランナーであり、運動生理学を専門とする藤井氏は、目下、その知見に基づいた暑さ対策の啓発に力を入れている。以下は、知っているようで知らない、「科学的に正しい暑さ対策」である。〉

四つの基本

 まずは、酷暑・猛暑対策の「四つの基本」を押さえておきましょう。

(1) 水分補給

(2) 冷却

(3) 暑熱順化

(4) 感覚的な冷却

 どれも重要なのですが、時と場合によって「軽重」が異なってきます。

 暑さの中で長時間運動をしたり、働いたりして、呼吸が激しくなり、頭がボーッとして、まさに熱中症の症状が表れ始めている状況を想定しましょう。そこで真っ先にすべきなのは、体の表面の「皮膚温」を下げることではなく、1秒でも早く体の中の「深部体温」を下げること、つまり(2)です。

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