寝るときは長袖、半袖どちらがよい? 専門家に聞く熱中症対策 「熱中症対策グッズでリスク増大の場合も」
「対策を取っている」という勘違い
ところが、「とにかく冷やせばいい」と思い込み、ネッククーラーを首に巻いたり、冷却シートを額に貼ったり、ハンディー扇風機で風を送ったりして、それらをもって「対策を取っている」と勘違いしている人はいないでしょうか。
これらの対策はいずれも(4)であり、いままさに深部体温を下げなければならないという緊急時に求められるのは(2)です。いくら(4)の対策を取っても、深部体温を下げるという点から見ると、ほとんど焼け石に水だからです。
もちろん、(4)が無意味というわけではありません。しかし、それはいわば平時の対策に過ぎません。例えば、それほど室温が高いわけではない屋内で作業をしている際に、「何だかちょっとムシムシするな」などと感じ、ネッククーラーのようなグッズを使って涼を得るのは、不快感が減じ、作業効率を上げられるというメリットがあり、大いに有効でしょう。
アイスバスがなければ……
ただし、気を付けていただきたいのは、(4)をしているから暑さ対策は十分、熱中症対策は万全と勘違いしてはいけないという点です。繰り返しになりますが、実際、「熱中症対策=ネッククーラーやハンディー扇風機」と考え、これさえやっておけば大丈夫と、グッズを“お守り”のように思っている人もいるのではないでしょうか。グッズをいくら駆使したところで、深部体温を下げる意味において、ほとんど効果は期待できないということは、しっかりと覚えておいてもらいたいと思います。
特にメントールには十分注意してください。メントール入りのスプレーなどは冷感効果が高く、不快感が解消されやすいのですが、その冷感によって体温も下がったと脳が勘違いし、「もう汗をかいて熱を体外に出す必要はない」と自律神経にも影響を与えてしまうことがある。こうした「感覚的な冷却対策」は、結果的には深部体温の上昇をさらに悪化させる可能性があります。
では、いざ熱中症の症状が出ている、あるいはそれに近い状況の場合、どう対処すべきなのでしょうか。改めての説明になりますが、早急に深部体温を下げる、具体的には39度以下に下げることが求められます。そのために最も効果的なのは、水の中に氷を入れたアイスバスに全身漬かることです。冷却する際の原則の一つは、空気より約20倍熱を伝えやすい「水」を使うことです。そして、もう一つのポイントは「面積」です。体の一部ではなく、できるだけ広い面積を冷やせば、それだけ早く深部体温を下げられます。この「水」と「面積」から導き出される正解が、全身アイスバスに漬かることなのです。
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