寝るときは長袖、半袖どちらがよい? 専門家に聞く熱中症対策 「熱中症対策グッズでリスク増大の場合も」

ドクター新潮 ライフ

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とにかく広い面積を冷やす

 これは、よく考えてみれば当たり前の対策です。いくらうちわで勢いよくあおいでも(=空気で冷却)、また額だけを冷やしても(=一部冷却)、効率が悪いのは自明の理ではないでしょうか。従って、動脈が通っている首を冷やせ、いや鼠径部(そけいぶ)を冷やした方が効果があるなどとよくいわれますが、それぞれ全く意味がないわけではないものの、いずれも体の「一部」であることに変わりはありませんから、体の部位にこだわらず、とにかく広い面積を冷やすことを優先すべきでしょう。

 そう都合よくアイスバスなど用意できないというケースであれば、水道から水をホースで引っ張ってきて体全体にかけ続けるとか、水に濡らして冷たくしたタオルを、手、胴体、下半身など、できるだけ広範囲に当て、タオルがぬるくなったらまた水で濡らして当て直したりするのが効果的だと思います。

人為的に体を暑さに適応させる方法

 ここまで、酷暑下における「いざ」という時の対策を説明してきましたが、当然ながらそうした事態に陥らないに越したことはありません。そのためには、体を暑さに順応・適応させる暑熱順化((3))が有効です。

 持久力トレーニングをしたら長い距離を走れるようになり、筋トレをすれば重いものが持ち上げられるようになるといった具合に、人間はストレスに適応するる能力を備えています。暑さに対しても同じで、体を暑さにならしておくことで、汗をかきやすくなったり、皮膚血流が良くなったりします。このように、人為的に体を暑さに適応させるようにするのが暑熱順化です。

 具体的には、暑熱下でのウォーキング30分程度を目安に始め、できるのであれば徐々に時間を延ばしていく。運動が苦手な人は、お風呂に長めに漬かることでも暑熱順化の効果は得られます。とりわけ高齢者など、体力が衰えている人はくれぐれも無理のない範囲で行ってください。1週間程度で暑熱順化の効果は出てくるとされていますので、夏本番に向け、いまから始めても十分に間に合います。

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