「1日3万5000回で脳をむしばむ…」 スマホ時代の「決断疲れ」から逃れる方法 「ジョブズの行動にヒントが」
好きな人の判断を「コピー」するメリット
尊敬する人の判断を「コピー」するという手段もあります。アメリカ・コーネル大学のアナリティスらが1万4000人を対象に行った調査によれば、「好きな人の選択をまねする場合」と「多くの人がした選択をまねする場合」を比較すると、前者のほうがパフォーマンスが良いことが明らかになっています。
私自身、アメリカの大学院に留学していた時代、憧れの優等生の先輩に朝から晩までくっついていたことがあります。その先輩がご飯を食べたら食べ、図書館に行ったら一緒に行き、寮に帰ったら共に帰るという具合に、「一日のスケジュールをどうするか」という決断を、完全にコピーしたのです。結果、無駄な選択から解放されたことが影響したのか、おかげさまで同学年の留学生の中では最速で博士号を取得することができました。
この「コピー」は、一見、自分では判断していないように映るかもしれませんが、「好きな人、尊敬する人の決断をまねするという決断」を自分でしているため、決断を放棄しているわけでありません。
決断疲れの弊害である「先延ばし」
また、決断疲れの弊害として「先延ばし」が挙げられます。面倒くさい、やりたくない。まあ、今日はいいか、明日からで――。先延ばしをしたところでいずれ決断を迫られることに変わりはなく、先延ばしをした分、無駄なストレスを抱えてしまったという経験は、みなさんにもあると思います。ダイエットに励んで失敗したことがある人などは実感しやすいと思いますが、「頑張ったし、少しくらいはぜいたくしてもいいか」「食べた分だけ動けばいいんだから」などと考えてしまうように、人間は「言い訳の天才」ですから、どうしても先延ばしをしてしまう傾向にあります。
この先延ばしを解決する方法もあります。
面倒くさいことに取り組むには「やる気」が必要となりますが、脳の大脳基底核の中の「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる神経核から、モチベーションを上げる信号が送られることで、やる気は上がります。「週刊新潮」でも連載をしている、脳科学の研究で著名な東京大学の池谷裕二教授によれば、側坐核を活性化させるには、体を動かす、いつもと違うことをする、ご褒美を与える、なりきる、以上の四つのアクションが重要とのこと。例えば「体を動かす」で言うと、勉強する気が起きなければとりあえず教科書を開いてみる。「とにかく動いてみる」のが有効なのです。
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