「1日3万5000回で脳をむしばむ…」 スマホ時代の「決断疲れ」から逃れる方法 「ジョブズの行動にヒントが」
私たちは今、いや応なしに「SNS時代」を生かされている。溢れる情報に、迫られる選択。そして次第に脳は疲弊し、「もうどうでもいい」と思考を放棄し始める。しかも、その自覚がないままに、ひそかに脳はむしばまれていくのだ。現代人必読、「決断疲れ」の対処法。【堀田秀吾/明治大学教授】
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物事にのめり込み、最後までやり切って力尽きる。こうした「燃え尽き症候群」は、昭和型のガツガツしたタイプに多く、令和の時代には冷笑されがちな印象があります。
一方で、私は大学教授として今どきのおとなしい若い子たちと接し、あるいは精神的な張りを失ってしまったような高齢者を見ると、現在、全く別の問題が起きているのではないかと感じています。あえて言うなら、「燃えられない症候群」。
常に冷めていて、燃え尽きるどころか熱くなることすらできない。その問題には「現代の病」が関係していると考えています。
1時間のうちに103回も決断
アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラムは、その病をもたらす現代の状況を「過剰負荷環境」と表現しています。情報社会の中で、文字通り情報が溢れに溢れている環境に置かれ、AとBのどちらがよいのか、Cを選んでDを選ばなかった場合のリスクはどれくらいなのかと、常に判断のための思考を強いられるため、行動する以前に脳が疲れて動くことができない。つまり「決断疲れ」してしまっている。そして決断疲れの怖いところは、自覚のないうちに蓄積している可能性がある点です。
「いくら情報が溢れているといっても、自分は決断疲れするほどの状況にはないし、疲れを感じたこともない」
そんな人には、ぜひ次の数字を知っていただきたいと思います。
私たちは1時間のうちに約103回もの決断を迫られている――。
〈こう解説するのは、言語学博士で明治大学教授の堀田秀吾氏だ。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学や社会心理学、脳科学などを融合した研究で知られる堀田氏は、ストレスへの対処法などを扱った著作が多くあり、NHK「クローズアップ現代」や日本テレビ「世界一受けたい授業」などのメディアにも出演。そして今回著書のテーマとして選んだのが「決断疲れ」である。
最新刊『決めることに疲れない 最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』(新潮社)を著した堀田氏が続ける。〉
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