「1日3万5000回で脳をむしばむ…」 スマホ時代の「決断疲れ」から逃れる方法 「ジョブズの行動にヒントが」
1日3万5000回も決断を
朝ご飯は何にするか、靴下はどれを履くか、天気予報の降水確率は30%だけれど傘を持って家を出るか、出社前に近所のコンビニに寄るか、それともとりあえず職場に着いてからコンビニに行くか……。
私たちの生活は無数の決断の連続です。その数は1日約3万5000回にも上ります。歯みがきする時には3回口をゆすぐといった無意識に行われる決断が約95%を占めるとはいえ、残りの約5%は意識的な決断であり、それだけでも約1750回になります。これを、睡眠時間を7時間として、起きている17時間で割ると、先ほど紹介したように1時間当たり約103回の決断を強いられているという計算になるのです。
脳の機能は石器時代とほとんど変わっていないのに……
これだけの決断を繰り返せば脳が疲労するのも当然のことと分かっていただけると思います。しかし、こうして数字を示されて初めて決断することの多さに気付く人がほとんどではないでしょうか。決断疲れが、自覚のないうちに蓄積していく「ステルス性のストレス」であるゆえんです。このストレスが累積していくと、私たちの脳はどうなるのか。全てが面倒くさいと感じられ、最終的に「燃えられない症候群」に陥ってしまうのです。
現代の若者は、情報の嵐の中で「コスパ」「タイパ」ばかりを考えて、熱く何かに取り組むことができない。高齢者も、認知症対策には趣味やサークル活動などの「ワクワク感」が必要なのに、街中に溢れる看板などに書かれた大量の情報や、テレビから流れてくるニュースに翻弄され、ワクワクすることにチャレンジしようと一歩踏み出す以前に疲れてしまっている。老若男女問わず多くの人が、決断疲れという「現代の病」にかかるリスクを背負っているのです。
それもそのはずで、人間の脳の機能は石器時代とほとんど変わっていません。にもかかわらず、情報量は格段に増えている。ニューヨーク・タイムズ1紙に掲載されている情報量は、17世紀の平均的なイギリス人が一生かかって触れる情報量を超えているという有名な話があります。SNS時代の今、氾濫する情報に脳が追いつけず、疲れてしまうのは必然ともいえるのです。
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