50歳で「一生に一度の恋」に落ちた不倫夫 密会部屋での逢瀬の果てに、思わぬ展開が待っていた

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 許されないと知りながら「一生に一度の恋」に落ちてしまう……。恋愛小説の類でしばしば起こる展開だが、現実でもありえない話ではない。

“許されない”の形は様々だろうが、不倫関係というのもそのひとつ。そして世間からのクリーンなイメージが求められる立場の人間であれば、なおのこと“許されない”度合いは強そうだ。

 参議院議員の身でありながら、当時妻子のいた元神戸市議の橋本健氏と恋に落ちた今井絵理子氏は、週刊新潮に不倫が報じられた後も関係を解消しなかった。今夏の参院選では今井氏を支える橋本氏の姿が確認されているし、さらには今月中の入籍まで取り沙汰されている。

 今井氏は許されざる「一世一代の恋」を成就させたケースになりそうだが、とはいえ、誰もがそううまくいくわけではないはずだ。『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があり、男女問題を30年近く取材してきたライターの亀山早苗氏が今回取材したのは、結婚とはまた別の方向を目指す、とある男性の「一生に一度の恋」である。これが彼だけの珍しい話ではないことは、レポートのてん末をお読みいただければわかるはずだ。

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 人は一生に何度、「本当の恋」をするのだろう。恋をするたび、これが最後の本当の恋だと思う人もいれば、もっといい恋が待っていると思う人もいるかもしれない。「本当の恋」かどうかは自己評価にすぎないし、それでいいのではないだろうか。

 大出龍太さん(52歳・仮名=以下同)は結婚して26年。すでに就職した長男、大学生の次男がいる。

「50歳直前まではごくごく普通の人生すぎて、特筆すべきところは何もありません」

 龍太さんは照れたようにそう言うが、“普通の人生”などどこにもない。あるのは“その人ならではの人生”だ。

 彼の人生は「50歳でガラッと変わった」という。ごく普通に生きてきたのに、人生はどこでどうなるかわかりませんねと彼はつぶやいた。

 龍太さんは謹厳実直なサラリーマンの父と愛情深い専業主婦の母の長男として、東京に隣接する県に生まれ育った。父の影響で小学生のころから剣道を始めたが、本当は嫌でたまらなかったという。

「僕はまったくスポーツもできないし、武道系の志みたいなものも理解できないんですよ。だけど父にやらされたので、しかたなく中学までは続けました。受験勉強が忙しいという理由でやめて、高校時代は天文部。星を見るのが何より好きだった」

 そんなロマンティシズムを抱いた少年は、大学を卒業すると、とあるメーカーに就職した。そこで出会ったのが5年先輩の冬美さんだ。

「仕事を教わっているうちに、男前の彼女への尊敬が恋心に変わりました(笑)。彼女に引っ張られるようにつきあい、『30歳のうちに結婚したい』と言われて言うなりになったんです。入社して3年で結婚するなんて、神経太いなと周りからは言われましたが」

 結婚が早すぎると思ったのは確かだ。彼の両親も、同じような理由で難色を示した。ところがすでに冬美さんは妊娠していたから、彼は逃げることなどできなかった。それも彼女の策略だったことはあとで知った。

「避妊していたし、彼女と関係をもったのはほんの数回。でも妊娠したと言われたら信じるしかありません。結婚式のとき、彼女の同期から『やられたね。冬美、避妊具に穴開けたって自慢してたわよ』と聞きました。そんなことをする人なのかと驚きましたが、結婚をやめるわけにもいきません。そうまでして結婚したいと思っていた彼女の心情を考えると、少しせつない思いもありました。彼女は『私があなたを出世させるから』と張り切っていた。どんな結婚生活になるかわからなかったけど、もう後戻りはできなかった」

 結婚と同時に彼女は会社を辞めた。出産後、落ち着いたらまた仕事を探すと言う。龍太さんはそのあたりは妻に任せることにした。就職して3年では収入は多くないが、冬美さんの父親が、自身の経営するマンションの一室を無償で貸してくれたので、なんとか生活することができた。

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