50歳で「一生に一度の恋」に落ちた不倫夫 密会部屋での逢瀬の果てに、思わぬ展開が待っていた

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「アパートを借りる」

 ただその後、コロナ禍となり、佳耶子さんは多忙を極めた。佳耶子さんが勤務する病院では新型コロナに罹患した患者を診てはいなかったのだが、それでも他から回ってくる別の病気の患者でロビーがあふれていたという。

「僕も出社したり在宅になったりを繰り返していました。思ったように仕事が進まない時期もあった。それでも佳耶子とは連絡を密に取り合っていました。彼女のいない人生だけは考えられなくなっていた」

 昨年の春ごろのことだ。佳耶子さんが「アパートを借りる」と言い出した。

「勤務先が遠いのでと言っていたけど、彼女は僕と会える場所を作ろうとしたんだと僕にはわかった。だから僕も家賃を払うと言ったんです。そうしたら『いいの。安いところだから』って。行ってみたら、広めのワンルームでしたが、セキュリティもちゃんとしているマンションでした。決して安い家賃ではないはず。彼女は僕に抱きついてきて、『一緒にいられればいいの。それだけ』と。うれしかった。ここがふたりの愛の城なんだなと」

 部屋で使うものをふたりでネットを見ながら購入した。ベッドやテーブル、キッチンで使うものなどを一緒に選ぶのは楽しかった。彼女は彼に鍵を渡した。

「ふたりだけの秘密。彼女はそう言いました。ここに来る日は連絡をとりあうこと、でも私は週末、ほとんどここにいると思うと言うんです。『うちの夫、実はほとんど帰ってこないの。研究室に泊まることもよくあって』と。寂しそうでしたね。僕もなるべく週末は来るよと思わず言ったけど、実際にどうやって妻に嘘をつこうかと考えてしまいました」

妻とは絶対に別れない

 次の金曜の夜、彼は「今日は会社に泊まりかも」と妻に言った。もとは妻の勤め先でもあったから、泊まりの仕事などほとんどあり得ないことはわかっているはずだった。それでも妻は「そんなことあるの?」といいながら疑っていないようだった。

「自分でも気分が浮き立って、周りから見たらおかしいと思うだろうと感じていたのに、実際には妻も同僚たちも、誰も気づかない。もちろん、気づかれたら困るんだけど、オレはこんな素敵な女性と関係をもっているんだぞと知らせてやりたいような気持ちもあった。恋すると分別がなくなりますね」

 ふたりだけの秘密。佳耶子さんの言葉を思い返しては自分を律した。ふたりは密に連絡をとりあい、会えない日々が続くと平日の夜、その部屋へ行くこともあった。会いたい思いが募ると仕事が手につかなくなるが、会えるとホッとし、一緒に過ごすと、身も心もとろけるように安らいだ。

「先のことなど考えていません。彼女は高齢の両親が夫を頼りにしているところがあり、夫も両親を大事に思ってくれているから離婚は考えられないと言う。うちも長男はもう独立して家を離れたけど次男はまだいるし、妻に非はないので自分から離婚を言い出すつもりはありません。でも佳耶子とは絶対に別れないつもりです。ただ、ともに時間を過ごせればいいんです。会えないと胸が痛くてたまらない」

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