42歳男性は夜の生活を拒まれ、妻からの“一言”で狂った… 彼女の言葉に悪意はあったのか

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 関係が悪化した夫婦に、明確なきっかけがあるとは限らない。馴れ合いになり、男女としての愛情より家族愛が強くなった結果、単なる同居人と化し、そこから他人より冷たい関係になることもあるし、小さなトゲのようなものが蓄積されていくケースもある。いずれにしても、人は「小さな拒絶」や「かすかな悪意」が積み重なると相手を信用しなくなり、いずれは顔も見たくないということになりがちだ。【亀山早苗/フリーライター】

「いろいろなことがあったけど、僕は妻が大好きでした。それも結婚してから好きになっていった。ただ、いつもどこかすれ違っていたような気がします」

 小林滋明さん(42歳・仮名=以下同)が、3年つきあっていた梨枝さん(40歳)と結婚したのは30歳のときだった。当初は婚姻届を出さず、お互いを束縛しあわないオープンな関係を望んでいたという。

「彼女との出会いは偶然でした。友人に誘われた芝居を観たあと、ふたりで近くの飲み屋に行ったら、あとから彼女が仲間とやってきた。その仲間が友人と友だちだったので、みんなで飲もうということになって。彼女は芝居の裏方の仕事をしていると言っていました。『それだけじゃ食べられないので、実家の美容院を手伝ったりしている』と。僕も芝居を観るのは好きだから、話をしているうちに意気投合したんです」

 彼女は実家住まいだったが、飲んでいるうちに終電を逃した。「朝まで飲むからいいわ」と言った彼女だが、かなり疲れているように見えたので、滋明さんは自宅に誘った。

「少し寝たほうがいいよ、と。本当に休息が必要だと思ったんです。僕が住んでいたアパートはそこから車で10分もかからない。タクシーを拾って帰って、布団を敷いたら彼女は倒れ込むように眠りました。恋に落ちたというわけではなかったですね」

 朝、目を覚ますとすでに彼女はいなかった。週末だから滋明さんは仕事が休みだったが、彼女はまた違う舞台の裏方を頼まれていて、「朝から仕事なので出かけます。ありがとう」と書いたメモが残されていた。そこには携帯電話の番号も書いてあった。だが滋明さんはそのメモを机の引き出しに入れ、特に気にとめてはいなかった。

「それから1週間後の金曜の深夜、彼女がいきなりやってきたんです。『寝かせてもらえる?』って。うちはホテルじゃないと思ったけど、やっぱり疲れた顔をしていたから部屋に上げました。彼女は『この前の宿泊費の代わり』とワインを持ってきたんですが、飲む暇もなくまた眠り込んでいて。なんだかおもしろい女だなと思ったのを覚えています」

 そんなことが何度かあり、いつしか彼女は週の半分くらいは「居着いて」しまった。気づいたら同棲状態になっていたのだ。一緒に暮らしていくうち、彼女の荷物が少しずつ増えていく。実家住まいなのにおかしいと思っていたら、「実は他の男と同棲していたのだが、彼に暴力をふるわれるようになった」と打ち明けた。

「彼女の言葉を信じるなら、けっこうひどい男なんです。もともとは彼女が借りたアパートなのに転がり込んできたあげく、一銭も出さずに住み着いて飲んだり食ったり。彼は音楽関係だけど30代後半で芽が出ず、その苛立ちを彼女にぶつけるようになったらしくて」

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