42歳男性は夜の生活を拒まれ、妻からの“一言”で狂った… 彼女の言葉に悪意はあったのか

  • ブックマーク

Advertisement

妻からの「言葉」

 心は寄り添っているのに、体は寄り添えなかった。滋明さんは梨枝さんをまるごと愛したかった。ひとつになりたかったのだ。だが流産以降、梨枝さんは性的な関係を拒否するようになった。

「覚悟が足りないから流産したの、子どもが私を母親に選ばなかったんだと言うんです。そういう考え方をする必要はないといくら言っても納得しなかった。子どもはいなくてもいい、僕が梨枝と関係をもちたいんだと言っても、無理だって。『シゲのことは好きだけど、あの行為はしたくない』と。そう言われればしかたがない。だけど様子を見ては誘っていたんです。そうしたら流産から1年ほどたったとき、『そんなにしたければ外でしてきて』と言われました。ものすごくショックだった。僕が単なる性欲で彼女をほしがっていると思われたのが心外でした」

 箍(たが)が外れた。それならとばかりに風俗に行ってみた。出会い系サイトで知り合った女性とゆきずりの関係を持ったことも多々ある。外泊した日もある。梨枝さんは気持ちを切り替えたのだろう、仕事に必死になっていた。また元の同居人的関係に戻ってしまったのだ。

「僕は荒んでいましたね。どんなに求めても梨枝とは、やはり心身ともに愛し合うことはできないのか、と。3年くらい野放図な生活をしていました。仕事だけはちゃんとしていたつもりだけど、一歩、会社を出ると飲むか女性を求めるか……。でも、なにをしても満たされなかった」

 34歳になっていた。もっと妻を愛したいのに、梨枝さんはつかみどころがなかった。会話がないわけではない。だがもっと話そうと思うと、「明日早いから寝るね」とするりと躱される。そのころには、滋明さんは梨枝さんとの性的関係はすでにあきらめかけていた。せめて心だけは寄り添いたいと願っていたのだ。

 だが梨枝さんは、自分が「外でしてきて」と言ったことの“罪”をわかっていない。滋明さんは梨枝さんを激しく求めながら、梨枝さんを少し憎んでいた。

次ページ:ふたりの関係をもう一度…

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[3/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。