42歳男性は夜の生活を拒まれ、妻からの“一言”で狂った… 彼女の言葉に悪意はあったのか

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「離婚しようか」と妻に告げると

 恋に落ちた滋明さんは、一気に美穂さんにのめりこんだ。美穂さんが就活で忙しいと言っても「少しでいいから会いたい」とだだをこねた。そんな滋明さんを美穂さんは「しょうがないんだから」と受け止めてくれた。

「本気で、『就職しないでオレと結婚しようか』と美穂に言ったことがあります。彼女はうっとりしたような目で僕を見つめていましたが、『既婚者なんでしょ。無理よ』と。無理と言われるとますます本気になりました。美穂が卒業するまでには離婚するからと宣言したんです」

 20歳近く年下の女性が自分のことを慕ってくれている。きれいな瞳で憧れているように見てくれる。そのことが滋明さんを夢中にさせた。

 ただ、美穂さんはもっと冷静だったようだ。就活を続け、第一希望の会社から内定をもらった。それを聞いたとき、滋明さんは「就職しないって言ったじゃないか」と美穂さんの頬を打ってしまった。美穂さんは頬を手で押さえたまま、憎しみのこもった目で彼を見た。もちろん、ふたりの関係は終わった。

「何をやってるんだ、オレは。そう思いました。完全に自分で自分がわからなくなっていた。梨枝に『離婚しようか』と言ったのはそれから数ヶ月後でした。すると梨枝は、『恋がうまくいかなかった?』と。知ってたのか、と思わず言ってしまいました。様子がおかしいから携帯を見た、ごめんと彼女は率直に白状したんです。つい、『梨枝がオレに、外でしてきてと言ったのを覚えてる?』と聞いてみました。いつかは聞きたかった。すると梨枝はまったく覚えていなかった。流産してからの数年間の記憶があやふやなんだそうです。あの言葉でオレの人生は狂ったとつい愚痴ってしまいました」

 梨枝さんは数日後、家を出て行くと言った。滋明さんは、やはり梨枝さんと離婚したくないと言い張った。ここまで聞くと、ふたりの心はいつも微妙にすれ違っていると思わざるを得ない。結局、梨枝さんは今、近くのワンルームマンションで暮らしている。ふたりで暮らしていたマンションの契約がもうじき更新となるので、滋明さんもそのワンルームマンションに越す予定だ。

「同じマンションの別の部屋を契約しました。梨枝にそう言ったらウフフと笑っていました。お互いの部屋を訪ねることになるのか、まったく会わないのかはまだわかりませんが、離婚届は出していません。落ち着いたら、今後のことを話し合うつもりです」

 夫婦でいる意味を、滋明さんは必死で探しているように見える。意味を見いだす必要があるのかどうか、私にはわからない。意味などなくてもいいのかもしれない。相手がかけがえのない存在だと思えれば。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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