蛸やエイ、人魚とも!? あなたの知らない「とんでも春画」

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 5月25日から8月13日まで、ロンドンの大英博物館で、江戸を代表する浮世絵師・葛飾北斎の展覧会「北斎-大波の彼方へ-」展が開催される。90歳まで生きた北斎の後半30年に焦点を当てた展観で、『富嶽三十六景』などが展示されるという。

 北斎といえば、1998年にアメリカのライフ誌が選んだ「この1000年間に偉大な業績をあげた世界の人物100人」に日本人で唯一選ばれるなど、世界中でその実力が認められている日本人絵師の一人である。モネやピカソなどにも多大な影響を与えており、秋からは上野の国立西洋美術館で、「北斎とジャポニスム」展がはじまる予定だ。

北斎の「世界一有名な春画」とは

 そんな北斎による「世界一有名な春画」として知られるのが、大小2匹の蛸に口と下半身を吸われる海女の痴態を描いた、「蛸と海女」の図である。北斎の艶本『喜能会之故真通(きのえのこまつ)』の中に収められたこの一図は、2015年に目白の永青文庫で行われた国内初の春画展でも展示され、20万人を超える来場者を魅了した名作春画だ。しかし春画においては蛸のほか、様々な海洋生物との交合が描かれていることを、御存じだろうか。

蛸だけじゃなく、エイとも!

 妖怪や動物など、〈人ならざるもの〉との交合を描いた春画を紹介・解説する書籍『とんでも春画 妖怪・幽霊・けものたち』を著した、京都精華大学非常勤講師の鈴木堅弘氏は、同書にて「春画の獣姦図のなかでも、最も奇妙な絵はエイとの交合図であろう」と記している(以下、同書より引用)。

「勝川春英は『御覧男女姿(おみなめし)』のなかで、漁師が海岸で赤エイと交わる場景を描いている。(中略)エイの腹下の口(総排出腔)が人間の女性器に似ているため、とくに沖縄諸島で漁師とエイが交わる地方民談(エイ女房譚)が伝えられてきた」

人魚が春画に描かれた理由

 さらには、人魚との交合図を描いた春画もあるというから驚きだ。人魚の春画が描かれた背景として、「当時、人魚は海洋の生き物のなかで最も好色であると信じられていた」ことがあったようだ。『とんでも春画』にはその他にも、多種多彩な妖怪春画や、女陰の幽霊が僧に復讐する本邦初公開の肉筆春画絵巻なども掲載されている。現代の想像力を軽々と超えてゆく、春画の自由でばかばかしい発想には驚くばかりだ。

デイリー新潮編集部

2017年6月13日掲載

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