杉山剛士(武蔵高等学校中学校校長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

ビジネス 週刊新潮 2020年6月11日号掲載

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 豊かな環境のなか、「自調自考」を核に据えて独自の教育を行う、都内男子校「御三家」の一つ、武蔵高等学校中学校。ますます先行き不透明となっていくこの不確実な時代に、子供たちにとって必要な経験とは何なのか。受験一辺倒でなく、20年後30年後の人間をつくる教育の神髄。

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佐藤 杉山先生が私立武蔵高等学校中学校の校長になられて、1年が経ちました。

杉山 ええ。昨年、43年ぶりに母校に戻りました。

佐藤 その前の埼玉県立浦和高校の校長時代に、私は先生とご縁をいただき、私の母校でもある同校で講演や授業を持たせていただきました。そして武蔵でも特別授業をさせていただきましたね。

杉山 その節は、たいへんありがとうございました。

佐藤 2年目に入って、いま学校はコロナで大混乱だと思いますが、どのような状況でしょうか。

杉山 3月2日から休校しています。卒業式は行いましたが、入学式も始業式もできませんでした。授業に関しては5月7日より、月曜日から金曜日まで毎日午前中に4コマずつ、全教科全学年で授業をインターネットで配信しています。

佐藤 いつくらいから準備されたのですか。

杉山 3月後半からですね。いまは生徒全員にタブレットを持たせている学校もありますが、武蔵は自調自考――自ら調べ、自ら考えるをモットーに、対面でのライブ感を大切にする学校でしたから、オンライン教育の環境がありませんでした。

佐藤 武蔵の生徒だったら、この休校期間に自分でどんどん勉強を進めて、1年先、2年先までやってしまいそうですけどね。

杉山 そういう生徒もいるかもしれませんが、やはり生徒たちにはリズムが大切で、個人だけに委ねられない部分があります。だから、長期戦になるとわかったところで、課題も出すけれども、オンライン授業の仕組みを考え、生徒が毎日時間割に沿って、パソコンを見ながら勉強する体制を作りました。ほんとうに突貫工事でした。

佐藤 それは先生方の質が高いからできたのでしょう。

杉山 ありがとうございます。仕組みを作るにあたって、三つのスローガンを作りました。「チャレンジ・楽しむ・助け合い」です。ピンチはチャンスだから挑戦してみよう、そんなにうまくいくはずないからせめて楽しもう、そしてお互い助け合ってやろう、というものです。なかにはパソコンをやりませんという先生もいるんですよ。もともと何の準備もなかったところから短期間で立ち上げたわけですから、これは誇らしいことだと思っています。

佐藤 リアルタイムで授業をやられているのですか。

杉山 最初は録画した授業をオンデマンドで配信しました。Google Classroomを使っていますが、生徒の受信環境を調べると、生徒たちが100%、リアルタイムで長時間受信できる環境にはないんです。そこで、だんだんと慣れていく中で、少人数のところはZoomでやるなど、リアルタイムの授業も増やしています。

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