頭を良くするには寝るのが一番? 東大大学院に首席で入学した脳研究者が解説する「効率的学習法」

ライフ2018年5月7日掲載

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 明日テストなのに何もやってない…! 慌てて夜通し勉強し、寝ずにテストに挑んだ、なんて経験がある人も多いだろう。

 確かに一夜漬けが一時的な学習効果を発揮することは科学的にも証明されている。しかし、東大大学院に首席で入学した脳研究者の池谷裕二氏は著書『受験脳の作り方 ―脳科学で考える効率的学習法―』のなかで、「実は睡眠も勉強のうちだ」と語り、その理由を脳科学に基づいて解説している。(以下、同書より抜粋、引用)

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 脳は睡眠中に、情報をさまざまな形で組み合わせ、整合性をテストし、過去の記憶を「整理」してゆきます。どの情報が必要か、どの情報が必要でないかを、海馬が吟味しているのでしょう。
 
 寝ることは、覚えたことをしっかりと保つための大切な行為なのです。「テスト直前しか勉強しない。毎回徹夜だ」という人がいますが、睡眠を削ってしまっては、学力が積み上がっていくはずがありません。記憶は、脳に長く留まってはじめて意味のあるものです。一夜漬けしてテストでいい点を取っても、その場しのぎにすぎません。

 睡眠と記憶の関係については、次のような実験があります。語学の勉強をしたあとにテストを行い、勉強前に比べて、どれだけ点数が上がるかを調べた実験です。

 勉強をすれば、もちろん、点数が上がります。これ自体は当たり前のことです。しかし、勉強のあとで、いつものように睡眠を取ってもらい、翌朝にもう一度テストを行ってみます。すると、翌朝のほうが、前日の勉強直後よりも、さらに成績が上昇していることが分かりました。

 勉強すれば、その分の知識が増えるので、点数が上がるのは当然なのですが、しかし、睡眠によって点数が上昇するとは、一体どういうことでしょうか。ただ寝ているだけですから、知識の総量は増えていないはずです。それにもかかわらず成績が上がるのです。

 ちなみに寝ることで記憶が定着する効果は、夜の睡眠でなくても、昼寝でも現れます。時間に余裕があるときには、昼に勉強をした後、30分くらいの昼寝をしてみるのもよいでしょう。

 睡眠の重要性を知っていると、逆に、テスト前に緊張して眠れないときに「どうしよう。このままでは記憶が定着できない」と、プレッシャーに感じる人もいるかもしれません。安心してください。睡眠の効果は、じつは「眠る」こと自体が重要なのではなくて、脳への情報を絶って、脳に整理整頓の時間を与えることなのです。実際、起きていても、静かにさえしていれば、海馬で情報の再生が始まります。

 ですから、静かな部屋で眼を閉じているだけで、睡眠と同じ効果があるのです。眠れなくても、テレビや読書はやめて、明かりも音楽も消して、布団(ふとん)の中で夜が明けるのを待ちましょう。眠れなくても気にせず、脳をそっと一人にしてあげてください。

 ちなみに、眠っている最中に学習用の音声を流しながら勉強する、いわゆる「睡眠学習」は通常は効果がありません。睡眠中の脳の邪魔はしないほうがよいでしょう。

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 池谷氏は「貴重な睡眠時間を減らしてまでよい成績をとろうと試みるのは、長期的には無意味です。学習の基本は『覚えられる範囲で覚える。理解できた範囲を確実にモノにする』ことです。あとは、いさぎよく寝ましょう」と解説し、「やるべきことをきちんとやって、残りの仕事は海馬に任せましょう。しっかりと寝て、海馬の活躍に期待する――これが鉄則です。寝るだけですむのだから楽なものです」とアドバイスしている。

デイリー新潮編集部