「結婚して墓の近くに戻ってこい」親への罪悪感に悩まされ続けた33歳一人っ子男性の半生

姫野桂 「普通の女子」になれなかった私へ 国内 社会 2020年1月3日掲載

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 私は一人っ子だ。両親曰く、当初の家族計画では子どもは2人の予定だったのが、今でいう妊活に苦労し、数回の流産を経て結婚10年目にしてようやく私が生まれた。だから、一戸建ての実家の子供部屋は、2人分を想定して少し広めだ。

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一人っ子は「ワガママ」なのか?

 小さい頃、周りに一人っ子が少なかった。親戚の集まりなどで同い年くらいの子どもたちが集まると、きょうだいがおらず競争慣れしていない私はすぐにオモチャやお菓子を他の子に取られて泣いていた。「早い者勝ち」という概念がすっぽり抜け落ちていたのだ。

 小学校に上がると30人クラスに一人っ子は私一人だけだった。基本的に家で一人だとたいていの物事は自分の思うように進む。だけど、小学校で図書係やら生き物係やらの係を決める際、人気の係はじゃんけんとなり、じゃんけんに弱い私はいつもやりたい係を担当できず、不機嫌になっていたことが小2の頃の通知表に書かれていた。
 
「一人っ子だから甘えん坊なんでしょ?」「ワガママなんでしょ?」そう言われることが子どもの頃は多く、それが嫌で一人っ子の特徴を消そうとモノをねだることをしないよう心がけた。逆に、きょうだいの多い子ほど「買って買ってー!!!」と、スーパーなどの床で転げ回って感情を最大限に爆発させていた。そして、私はそれを見て子どもながらにドン引きしていた。でも、彼女たちはそうしないと欲しいものが手に入らないのだ。

 私の場合、ねだりはしなかったが、激しくねだる前にいつの間にか欲しいモノが手元にあることが多かったように思う。

 私は一人っ子であることに小学生の頃はコンプレックスを抱いていたし、中学生くらいになると、年の離れたお姉ちゃんがいる子は「お姉ちゃんがくれた」と、流行のアイテムを持っていて憧れた。私と同世代の一人っ子は、どんな心情で、どう過ごしてきて、今はどんな価値観を抱いて日々を送っているのだろうか。そんな疑問がわき、今回は一人っ子男性の鈴木航平さん(仮名・33歳)に話をうかがった。

 待ち合わせ場所に現れた鈴木さんはひょろっとしていて背が高く、清潔感のある男性だった。優しそうな雰囲気なので、一見するとモテそうだ。しかし、この後彼から発せられる数々のエピソードに、私は目を白黒させることになる。
 
 鈴木さんの地元は北関東。小さい頃から一人遊びをしており、きょうだいが欲しいと思ったことはないという。そもそも「きょうだい」という感覚がわからないと。それは私も同じである。親とも違うし友達でもない。また、親からはやや過保護気味に育てられたそうだ。これも私と同じだ。

「これが一人っ子と関係しているのか分かりませんが、例えば公民館での行事や地元での祭りって小学生くらいだと友達と複数で行くじゃないですか。でも、自分の場合、そういう場に行くのは母親と2人でした。さすがに中高生になったら友達と行くようになりましたけど。

 未だに人付き合いや集団行動が苦手なんです。一対一の対話なら大丈夫なのですが……。思春期にはちょっとした反抗期はあって、一度カッとなってコップを投げて割ったことがありました。その時は罪悪感がすごかったです。でもその一度だけで、親とケンカをしたことはほぼありません」

 親とケンカをしたことがない? 私は現在進行形でしょっちゅう母親とケンカしている……。しかし、子どもの頃は親のために良い子でいなくては、期待に応えなければ、親を喜ばせなければと常に思っていた。

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