高学歴信者を心酔させた「オウム麻原」マインドコントロール術、4つのカギ

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元信者も打ち明ける

 この点、東大理学部物理学科に合格しながら、オウムに出家し、一連の事件後、脱会した野田成人氏もこう打ち明ける。

「確かに私も“物理学者になって、ノーベル賞を獲るぞ”と大それた夢を抱いていました。ところが進学した途端、この世界には自分より桁外れにすごい人たちが周りにたくさんいることが分かります。たとえば、『ガロア理論』のフランス人数学者、ガロアはこれを14歳の時に編み出したが、20歳の私には全く理解できなかった。もう自分の先が見えてしまい、挫折しました。そんな大学3年の時にオウムと出会ったのです。麻原から、“ハルマゲドンは必ず来る。君はどうする。修行している者はいいが、していない君の家族や友人はどうなる”と世界救済を呼びかけられ、感銘を受けました。私は自分のことしか考えていなかったのを恥じ、託された使命に目覚めた気になり、過ちを犯してしまったのです」

 麻原は彼らの心をくすぐった。それと同時に、

「有能で問題意識のはっきりしている学生ほど、自分の究めたい研究ができず、閉塞感に陥っているもの。麻原がこうした若者にそれを可能ならしめる環境を実際に提供した点も大きい」

 と解説するのは、カルト問題に詳しい安斎育郎・立命館大学名誉教授だ。

「オウムはサリン製造プラントの第7サティアンをはじめ、億単位の金を投じて、施設を作っていた。そこで自分の好きな研究に没頭できると思えば、魅力を感じた者もいるはずです。科学者にとっては、科学的真理は、東大で発見しようが、オウムで発見しようが同じなのかもしれません」

 まさに土谷正実=地下鉄サリン事件の共謀共同正犯で死刑確定=がこれに該当する。サリンの製造を成功させた土谷は、筑波大学大学院化学研究科を修了。博士課程在籍中にオウムに出家した。

 95年当時、当方の取材を受けた彼の母親は、こう慨嘆していた。

「息子は“オウムには、1日20時間も自分の好きな研究ができるところがあるんだ。そこでは、がんもエイズも治る”と話していました」

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