〈敗戦を機に霊長類宣言〉 公開延期「昭和天皇」ピンク映画、不敬描写の数々

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不敬描写で公開延期「昭和天皇」のピンク映画(上)

 明らかに昭和天皇に模した人物を、あろうことか、ピンク映画の「主役」の1人として登場させる。そんな前代未聞の映画が、去る2月16日から公開されようとしていたが、前日になって突如延期になった(※後に公開中止)。その脚本には、不敬描写がこれでもかと連ねられ……。

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 上半身を露わにし、右手で自身の右胸を掴み、左手の中指と薬指を下着の中に入れた女性が、ポスターの中からこちらに艶めかしい視線を向けている。黒いハットにメガネ、髭をはやした男が半裸の女性を後ろから抱きすくめているカットには、〈神々しい程 勃ちまして〉との一文が添えられ、ポスターの左側には、〈ハレンチ君主 いんびな休日〉という映画のタイトルがある。

 これは先日まで都内の映画館に張り出されていたピンク映画のポスターだが、今ではもうはがされてしまい、見ることは叶わない。ポスターだけではなく、事前に準備された宣伝のためのチラシも回収され、ネット上にアップされていた予告動画もすでに削除され、見られなくなっている。この映画が存在した痕跡を、出来得る限り消し去ろうとするかのように――。

 映画の提供主は「大蔵映画」の子会社のオーピー映画である。

「大蔵映画はピンク映画の老舗。会社を創立したのは、元々は新東宝の社長を務めていた大蔵貢氏です。彼は新東宝の社長時代にエロ・グロ路線を推し進め、社長退陣後に大蔵映画を創立しました。現在は大蔵貢氏の息子の滿彦氏が社長を務めています」(ピンク映画業界関係者)

 件の映画の監督は荒木太郎氏(57)。20世紀末のピンク映画の「四大巨匠」の1人に数えられる監督だそうで、脚本にも携わるだけではなく、自ら重要な役で出演してもいる。また、やはり映画監督のいまおかしんじ氏が脚本で参加している。出演者は、いずれもAV女優の水野朝陽(あさひ)や艶堂しほりなど。

「この映画は2月16日から22日まで、大蔵映画が運営する東京・上野の『上野オークラ劇場』などで上映される予定になっていました」

 ピンク映画に詳しい映画ライターはそう語る。

「しかし、公開前日の2月15日に突然、上野オークラ劇場が“『ハレンチ君主 いんびな休日』は、都合により『息子の花嫁 いんらん恋の詩』に急きょ変更になりました。大変申し訳ございません”とSNSなどで告知。一体何があったのか、と関係者の間で話題になっているのです」

 すでに触れた映画のポスターには、公開延期の理由になりそうな情報は含まれていない。しかし、消し去りきれなかったこの映画の痕跡を繋ぎ合わせていくと、延期の理由はハッキリと見えてくるのだ。

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