「大家族」ドキュメント番組の裏で起こった惨劇 『検索禁止』著者が明かす秘話

芸能2017年7月11日掲載

■大家族と恐怖

 大家族という言葉の響きには、どこか心温まるものがあるようで、テレビの情報番組やバラエティ番組のキラーコンテンツの1つとして、根強い人気がある。4日には『潜入!ウワサの大家族SP』というスペシャル番組も放送されたばかりだ。

 いろいろ細かいトラブルやケンカはあるにせよ、それもまた活力として楽しく、たくましく暮らしている――これが多くの人の抱く「大家族」のイメージであり、テレビもまたそれをトレースする。

 しかし、実際の取材現場は必ずしもホノボノしたシーンばかりではない。「大家族」モノの秘話を明かすのは、『放送禁止』シリーズ等を手がけてきた映像作家で小説家の長江俊和氏。長江氏は、自身が過去に採集した怖い話や恐ろしい都市伝説等を詰め込んだ新刊『検索禁止』で「大家族」モノの取材にまつわる強烈なエピソードを紹介している(以下は『検索禁止』から引用・抜粋)

バイオレンス事件

 長江氏が、「大家族スペシャル」(注・『潜入!ウワサの大家族』とは別番組)のディレクターを担当したときのこと。この番組は1つの家族を取材するのではなく、全国各地の大家族を複数のディレクターで分担して取材することになっていた。

 番組放送前に、プロデューサーは各地でディレクターが取材した映像をプレビュー(試写)でチェックする。その時、長江氏は、同僚の撮影した強烈な映像を目にすることとなった。

 ある地方の大家族の夕食風景。

 そこには本来いるはずの高校生の長女の姿がなかった。穏やかそうな父親が、兄弟たちに聞くと、テレビに出たくないからと部屋に閉じこもっているという。

「みんな出るって約束したのにな」

 そう言って父は娘のいる子供部屋に向かった。ドアを開けると、ふてくされた長女が机に向かって座っている。なぜ食事に来ないのか、父が尋ねると、

「テレビに出たくないから」

 突然、父は豹変し、娘に平手打ちを浴びせた。それも2発、3発と。

 さらに長女を殴り始めた父をスタッフは制止しようとするが、止まらない。

 娘は必死に許しを請うが、父親は容赦しない。彼女の服が破けても、暴行は続けられた。

 再びスタッフが止めに入ろうとすると、父は鬼のような顔でカメラを睨みつける。

「撮るな」

 怒鳴りつけるように言うと、スタッフを追い出した。

 ドアの向こうからは、娘を殴打する音と、「お父さんやめて」と懇願する声が響いている。やがて、その声も悲鳴に変わり……

 試写の場面はここで変わる。

 畳の一画には血のしずくがポタポタとこぼれ落ちている。

 鼻血をすすり上げながら味噌汁をすする長女の姿。

 何事もなかったかのように夕食を囲んでいる大家族。

 父親は穏やかな表情で、

「やっぱり家族は、みんな一緒が一番いいな」

 どうやら異変はこの夜だけであったようだが、当然、問題の場面は放送されなかった。

 のちに長江氏は、こうしたドキュメンタリー映像の持つ迫力からインスパイアされて、ドラマとドキュメンタリーを融合した「フェイクドキュメンタリー」の着想を得る。そうして生まれたのが、今や伝説の番組となっている『放送禁止』シリーズなのである。

デイリー新潮編集部