知られざる少年院の掟「24時間私語禁止」 矯正教育のプロが明かす裏事情

社会 2016年3月23日掲載

  • ブックマーク

■24時間私語禁止

 刑務所での体験談を「シャバ」に出たあとに語る人は多い。最近では「メシが美味い」「テレビも見られる」という調子で、ムショ生活を意外とポジティブに振り返る人も珍しくはないようだ。

 一方で、意外と知られていないのが少年院。

 少年なのだから刑務所よりはユルい環境では? と思うかもしれないが、実は正反対。

 何と基本的に「24時間、私語禁止」なのだ。

 作業中とか食事中に限らず「原則、すべての私語を禁止する」というのは相当な厳しさである。

 こうした知られざる事情を明かしているのが、長年、犯罪者の矯正教育に携わってきた岡本茂樹氏。岡本氏は新著『いい子に育てると犯罪者になります』で、少年院の問題点について指摘をしている。以下、同書の第2章「少年院に入ると、さらに悪くなる」をもとに、少年院の現状と問題点を紹介してみよう。

■一日中「教育」

 本来、刑務所は受刑者に「刑罰」を与える場であり、少年院は少年に「教育」を行う場である。刑務所は「刑務作業」が罰となるため、その作業が終われば自由な時間が与えられることになっており、その間に受刑者同士が雑談をすることも許されている。

 ところが、「教育」が目的の少年院では「すべての時間が教育に充てられる」という建前から、少年の自由度は極端に制限されているのだ。

 そのため、教官の許可なしには、誰とも会話をしてはならず、清掃などの際に必要な会話も、その都度許可をもらわなければならない。

 非人間的な扱いに思われるかもしれないが、少年院側からすれば「教育」以外の意味もある。刑務所では多くの場合、受刑者同士が「出所後の犯罪計画」を語り合うといったことが珍しくない。

 少年院でも私語を許せば、このようなことが起こる可能性は高い。

 また、少年の間で力関係が生まれ「タテの関係」が形成されることで、いじめなどが生じることもリスクとしては考えられるという。

■「私語禁止」の問題点

 このように考えれば「私語禁止もやむを得ない」と思う方も多いことだろう。しかし、岡本氏は更生の観点から考えると、厳しすぎる規則には問題点もあるという。

「『私語禁止が当たり前』になっていた少年が、社会に出てからうまく人と付き合えるはずがありません。

 少年たちは常に法務教官の指示に従います。人の指示がないと自分から行動しなくなります。そうすると、社会に出てから自分の気持ちを素直に表現できなくなります。(略)

 結局、少年たちは、非行をしないような新しい人間関係をつくることができません。そうなると、非行をしていた頃の悪い人間関係に戻ります」(『いい子に育てると犯罪者になります』より)

 もちろん、少年院で自由を謳歌させる必要は全くないが、彼らが「悪のサイクル」から脱け出せないことは、社会全体にとってもプラスにはならないだろう。

 私語を禁止し、過度に感情を抑圧する生活を強いることは「罰」としては意味があっても、「教育」としては逆効果である、と岡本氏は述べている。

デイリー新潮編集部