「教育資金」「タワマン」節税で思わぬ落とし穴 失敗の実例に学ぶ「相続税対策」

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■「まだ死ぬつもりはない!」

 さて、これまで挙げてきた失敗例に共通するのは、親と子、そして残された兄弟間でのコンセンサスが取れていない点です。

 先に述べた(※第1回を参照)「遺産分割対策」、「納税資金対策」、「節税対策」の3つの柱は、親の想いだけでは進められず、また、子供の想いだけでも進みません。

 たとえ子供が相続対策の必要性を訴えても、親から「まだ死ぬつもりはない!」と激怒されたらそれまで。手をこまねいている間に親が認知症を患い、慌てて税理士に依頼したら、多額の相続税が発生することが分かる――。そんなケースを数え上げればキリがありません。

 では、早い時期から相続対策に取り組むためにはどうすべきか。カギとなるのは「介護」です。

「相続」という言葉に拒否反応を示す親でも、「介護」は避けて通れません。そこで、家族全体で親の介護計画を検討するのです。

 2世帯住宅を新築して子供と同居するか、それとも介護施設に入居するか。同居するなら誰が介護するのか。こうした内容を親と子供たちが腹を割って話し合う。2世帯同居することになれば「小規模宅地等の特例」が使える可能性が出てきますし、長男の妻が親を介護すると決まれば、兄弟間で相続額を上乗せすることを検討してもいい。「介護」の延長で「相続」について話を進めるのはとても理に適っていると思います。

 また、こうした話を親に切り出すにはタイミングも重要です。やはり、先祖に思いを馳せるお盆やお彼岸、お正月などが適しています。親戚が大勢集まるので話し合いもしやすい。

 相続は一家を巻き込んだ一大事です。それゆえ、乗り越えた時には家族の絆がより強くなることもある。「失敗」に学び、悔いのない相続を目指してください。

特別読物「5人に1人が課税対象!『骨肉の争い』が倍増!! 失敗の実例に学ぶ『相続税対策』――高原誠(フジ相続税理士法人代表社員)」より

高原誠(たかはらまこと)
2005年に税理士登録。06年にフジ相続税理士法人を設立。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約600件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。

週刊新潮 2017年4月20日号掲載

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