風邪でもないのにやたらと鼻水が出るように…抗がん剤の副作用でがん患者を驚かせたのは“髪の毛”だけでなく“意外な場所”の毛が抜けたことだった

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今日はずいぶん抜けたな

 脱毛というと、頭の髪の毛が抜けることばかりを想像していた。しかし、抗がん剤の影響は頭だけに表れるわけではない。鼻毛も腕の毛も、お腹の毛も抜ける。

 私の場合、そういう順番で脱毛が進んでいった。

 頭の髪の毛も少しずつ抜け続けていた。お風呂でシャワーを浴びると、排水溝に驚くほどの髪の毛がたまる。髪を洗っているときにも抜けるし、洗い流すとさらに抜ける。

 排水溝のネットに引っかかった髪の毛を集めるのが、いつの間にか日課になった。これだけ抜けているのだから、頭の毛も相当減っているはずだ。しかし、もともとの毛量が多かったためか、鏡で見る限りでは、まだそれほど目立たなかった。

 それにしても、これまで何十年も自分の頭に生え揃っているのが当たり前だった髪の毛が、こんなふうに抜けていくのは妙なものだった。

 排水溝にたまった髪の毛を見ながら、今日はずいぶん抜けたな、などと思う。楽しいことではないはずなのに、どこか夏休みの自由研究で観察をしているような気分にもなっていた。ほんの数ヵ月前、十数本指に挟まるだけで恐怖を感じていたのに、ずいぶん感覚が変わっていた。

 おそらく全体的に副作用があまり重くはなく、仕事も続けていられたことが心を軽くしていたのだと思う。

Y・J
1963年生まれ。京都大学大学院を経て、テレビ局に就職し、数多くのドキュメンタリー番組や教育番組を手掛ける。退職後は大学に転職し、現在も教員としてメディア論や社会学などを教えている。

デイリー新潮編集部

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