不倫相手と暮らしている間に、自宅の「レコード」「鉄道模型」を勝手に売られた…「妻を訴えたい」50歳夫の怒りと葛藤

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帰宅すると「大事なもの」がなくなっていて…

 娘も自分の意見をハキハキ言う。「おじさんはあたしのパパじゃないけど、パパみたいなものになってくれるの?」と聞かれたときはハッとしたという。だが彼は「なるよ」と答えた。娘が言っているのは、婚姻届のことではない、関係性の問題だと思ったから。それ以降、娘は武龍さんを「たけちゃん」と呼ぶようになった。彼はニコニコと返事をするそうだ。好きなように呼べばいいと彼は感じている。

「それからは数ヶ月に1度、帰宅するくらいですね。平日、半休をとって自宅へ行き、必要なものをとってくることが増えた。でも先日、戻ってみたら僕の大事なものがなくなっていたんです」

 貴重なLPレコード、スニーカー、1年間アルバイトをして買ったヴィンテージのジーンズ、大事な初版本、もう手に入らないような鉄道模型。彼はこうしたものを集めるのが好きだった。自室に並べていたものもあったが、高額な鉄道模型は大事にケースに入れてダンボールに詰めていたものもたくさんある。総額で数百万にはなるのではないかと言う。

「それらが全部、なくなっていた。長男に連絡したら知らなかったようで絶句していました。『あの人は、人の思いがわからないんだよ』と。これは窃盗になるのではないかと、知り合いの弁護士に相談してみたんです。そうしたら損害は請求できるものの、損害額の立証はこちらがしなければいけないと。どういうものがあったか詳細には覚えていないし、リストを作ることができるかどうか……。ただ、このままですませるのは何としても癪なんですよ。どうにかして訴えてやりたい」

このままだと誰も得をしない

 そのまま離婚しちゃえばいいじゃないかと長男は言った。だがそうなると、実の娘や次男ともずっと会えないのではないかと不安になる。

「つい最近、妻から彼女に慰謝料の請求がありました。こうなったらそれぞれに訴えを起こすしかないのかもしれません。妻との関係がこんなことになるのは残念ですが、そろそろ本気で腹をくくらなければいけないのか……。なんだかもうちょっと温和な解決方法を探りたいんですけどね」

 不倫した夫を苦しめてやりたい妻、逆恨みのように勝手に夫のものを売り払ったことに怒りを禁じ得ない夫、そして恋したがゆえに慰謝料を請求された夫の恋人。このままだと誰も得をしないまま、泥沼にはまりこんでしまいそうだ。

「本来なら子どもたちを傷つけないよう、もっときれいに離婚するべきでした。僕の決断が遅かったのがいけなかったのかもしれない。過去を振り返れば、妻とうまくいくはずもなかったのに……。千春に罪はない。彼女は今、仕事をしながら通信制の大学でも一生懸命、勉強しているんです。彼女を苦しめたくない」

 不倫がバレたところから、それまでの夫婦関係の膿が一気に噴き出したような形になった武龍さん。半世紀生きてきて、こんなことになるとは思わなかったとため息をついた。

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【記事前編】では、武龍さんと妻の結婚の経緯や、子どもたちをめぐる夫婦の対立、心を閉ざしかけた長男を連れ出した2泊3日の旅について紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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