最初の点滴からしばらくは吐き気も発熱もなかったが…標準治療ではなく治験を選んだ「膵臓がん」患者が“治療から5日後”に経験した激しい副作用の正体
治験の条件
大学卒業後、テレビ局で数多くのドキュメンタリー番組や教育番組の企画・制作に携わり、退職後は大学でメディア論について教えてきたY・Jさん(62)。その日常は、2024年7月に膵臓がんの告知を受けたことで大きく変化します。悩みながらも自身の状況を家族や友人に伝えた彼は、治療法をめぐって大きな決断を下します。当初から想定していた標準治療ではなく、治験という選択肢を選んだのです。【Y・J/大学教員、映像作家】
(連載第12回)
【写真を見る】“治験”に挑むことに決めた著者。治療前に向かった先には、息を呑むような光景が広がっていた…がん患者という“新しい世界”を生きる筆者の近影も
紹介状をもらった私は治験を実施している病院を訪れ、説明を受けた。治験は未発表の薬を使うので情報管理が厳しい。私がどのような治験を受けたのかについて書くことはできない。ただ、治験を受けるには様々な条件があることを知った。
例えば、年齢の制限、既往症の制限、その時点での生体検査の結果などだ。私が受けようとしていた治験には「他の抗がん剤療法を受けたことがない」という条件がついていた。もし化学療法をスタートする予定だったXデーに病院へ行き、一度でも治療を受けていれば、その治験を受けられなかったということになる。あの日の朝、妻と話したことが治験を受ける可能性につながったことがわかり、ほっとした。
後になって、治験にも様々なタイプがあり、標準的な抗がん剤療法を受けた後に始められるものもあることを知った。いずれにしても、インターネットで簡単に調べただけではわからない。セカンドオピニオンを求め、医師から直接説明を聞いて初めて具体的な情報にたどり着けたのだった。
私は治験の条件をクリアしていた。しかし、そこでも待たされることになった。治療を始めるには改めて様々な検査を行わねばならず、さらに病院内での事務的な手続きも必要だった。結局、治療の開始は、早くても9月末ということになった。
「数ヵ月」とはどれくらいなのか
ここでまた、呪いの言葉が頭をよぎる。
「膵臓がんは進行が早い」
宣告を受けたのが2024年の7月末、治療開始が9月末。2ヶ月間、何もせずがん細胞を放置していたことになる。最初に言われた「治療しなければ数ヵ月」という言葉がよみがえってくる。
はたして「数ヵ月」とはどれぐらいなのか。6ヵ月あれば「半年」と言うだろう。という事は、せいぜい4ヵ月くらいとして、2ヵ月間何もしなかった私に残された時間は2ヵ月……かも知れない。「余命2ヵ月」の状況で治療を開始して、手遅れという事は無いのか……。妄想が駆け巡る。
おずおずと医師に聞いてみたが、「まぁ、大丈夫でしょう」という回答だった。そもそも延命治療なので、既に手遅れと言えば、もう手遅れなのだ。
一度やると決めた以上は腹をくくるしかない。そもそも“8月末に標準治療を始めた自分”と“9月末に治験を始めた自分”を比べることはできないので、あれこれ悩んでも仕方がないことだった。
24年9月末、私はやっと治療を開始した。
最初の治療は入院して行う。おそらく標準的な化学療法でも同じだろう。どのような副作用が出るかわからず、急に症状が悪くなった場合にはすぐに対応できるように手厚い体制のもとで治療を開始するということだ。
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