視聴率が2倍以上に爆伸び 珠玉の脚本、重量級キャスト…注目の政治ドラマ「ポリティカルパン」が面白い

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兄弟による骨肉の争い

 だが、兄妹による骨肉の争いになったら、一躍注目の選挙区になり、雅にもスポットライトが当たる。絵空事ではない。実例もある。おそらく野木氏は知ったうえで書いている。

 たとえば、2024年10月の総選挙では、沖縄4区で日本維新の会の山川泰博氏と、れいわ新選組の山川仁氏が立候補した。実の兄弟である。

 兄弟対決は連日のように報じられ、選挙戦はヒートアップ。話題をさらった。票が割れてしまい、2人とも小選挙区では落選したが、弟の仁氏は比例九州ブロックで復活当選する。山川兄弟も政治家一族だ。肉親対決はほかにも例がある。当落の行方が見どころの1つになる。

 出演陣の演技も申し分ない。石原は華やかなヒロインから影のある役まで演じ分けてきたが、今回の弥生は人懐っこさと抜け目のなさを併せ持つ人物だ。

 大泥棒だから風格も漂わせなくてはならないが、ちゃんと出ている。39歳の石原自身、貫禄が出てきた。かつての大地真央(70)を思わせる強い存在感を放っている。

 河合の表現力は相変わらずピカイチ。酔っ払っているときの雅は愚かな若者そのものだが、出馬を決めると変貌する。純粋に世の中を変えたいと願う、若い女性にしか見えない。

 河合は同じ作品の中で、演じる人物の人間性を変えられる。2024年のカンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した主演映画「ナミビアの砂漠」でもそうだ。精神を病む女性を演じたが、途中から別人のようになる。そこに不自然さはなかった。

 河合が同一作品内で別人格になれるのは、顔つきから口調、姿勢、体の動かし方まで変えるから。感性も反射神経も抜群だ。

 この物語はテンポが速く、無駄な場面が見当たらない。現代の視聴者に合っている。ショート動画に慣れ、ドラマも倍速で観る人が増えている中、展開がスローで冗長なドラマは支持されにくい。

 テンポの良さは一目瞭然。弥生は盗みに入った家で全てを盗まず、家人が亡くなっていると、しばらく寄り添った。弥生の義賊性が表された。放送開始から1分30秒弱だった。

 弥生が官房機密費をターゲットにすることを決めたのは同5分50秒。ふんだんにあり、盗んでも誰も痛まないことを知ったからだ。1時間ドラマは正味47分である。

 ただし、死角はある。日本では政界ドラマが当たりにくい。政界風刺劇も同様だ。田村正和さん主演で、同じフジテレビが制作した「総理と呼ばないで」(1997年)も、視聴率は伸び悩んだ。

 作品だけに責任があるわけではない。欧米と日本では、政治家と有権者の距離感が異なる。欧米では政治家を、自分たちが政界に送り込んだ同志的な存在と見るが、日本では政治家に対する畏怖と冷めた視線が交錯する。政治を題材にしたドラマは楽しみにくい土壌があるのだろう。

 この物語がドラマ史を変えられるか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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