「担当スカウト=強く推した人」ではない? 現役スカウトが明かすドラフト会議“球団内攻防”の舞台裏
ドラフト会議で選手が指名されると、近年は「担当スカウト」の名前とコメントが紹介されるのが一般的になった。だが、担当スカウトだからといって、必ずしもその選手を高く評価し、強く推薦していたわけではないという。【西尾典文/野球ライター】
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上層部の判断で
ある現役スカウトは、「正直、1位という評価ではなかった選手が、球団の事情で繰り上がって1位になったこともある」と明かす。華やかなドラフト会議の舞台裏では、スカウト、編成、監督、さらには球団経営陣まで、それぞれの思惑が複雑に絡み合っている。
10月22日に行われる今年のプロ野球ドラフト会議。コロナ禍の2020年から2022年の3年間は無観客で行われたが、2023年以降は有料チケットでの観覧が復活し、今年は育成選手選択会議終了後にトークショーが行われるなど、年々ショーアップが進んでいる。
指名される選手についての情報量は年々増えており、担当スカウトとコメントが紹介されることが一般的となった。しかし現場のスカウトにとって、「担当スカウト」という見せ方は、必ずしもありがたいものばかりではないようだ。
「その選手の担当スカウトだからといって、個人的に高く評価していた選手というわけではありません。特に1位など高い順位で指名する選手は、球団の意向が強く反映されますし、抽選があります。過去には正直1位という評価ではなかった選手が、繰り上がって1位となったことがありました。そういうケースで担当スカウトがあたかも強く推したかのように報道されるのは辛いところがありますね」(関東地区担当スカウト)
どの選手を何位で指名するかについては球団によって異なるが、あくまで担当スカウトは調査や推薦を行う役割で、決定するのはGMやスカウト部長などの上層部というケースが大半である。中には担当スカウトが強く推していなかった選手が、上層部の判断によって上位指名となる例があるそうだ。
コンテンツとしてのドラフト会議
ドラフト会議を巡る“球団内”での攻防はほかにもある。よく聞かれるのが、監督など現場の声が強くなりすぎるケースである。前出のスカウトはこう続ける。
「現場からどんな選手が欲しいか、意見を出すことはもちろん重要だと思います。現場を預かる監督は毎年が勝負なので、早く使える選手を欲しがる傾向があります。ただ、1年目から一軍でバリバリ活躍できるような選手はほとんどいません。ドラフト会議の時に言われる“即戦力”という言葉ほど当てにならないものはないですからね。現場の声を調整するのが編成やGMの役割です。時には監督の意見を抑えきれていないと感じることがあります。少なくとも現場は要望を出すだけで、最終決定は編成側が行うべきだと思いますね」
過去には監督がポジションなどの要望だけでなく、具体的な選手名まで挙げて指名するように求めてきたケースがあるという。一方でドラフト会議に全く興味を示さない監督がおり、当日、1位指名が終わると早々に会場を後にしたという話を聞いた。どちらに偏ってもスカウト陣の士気に影響することは間違いない。球団上層部には、そのあたりのかじ取りが求められる。
スカウトにとって厄介なのは、監督など現場からの要望だけではない。特に大変なのが、GMよりさらに上の経営にかかわるオーナー、社長、本部長などの球団幹部から寄せられる声である。
「昔はドラフトの注目度もそこまで高くはありませんでしたが、今は観客を入れて開催していますし、関連するニュースが増えました。影響しているかは分かりませんが、各球団がドラフトを大きなコンテンツとして重要視しているように思います。注目度が上がること自体は悪くありません。経営層は実力に加えて、いかに話題を作れる選手かを重視する傾向が強いです。分かりやすいのが甲子園で活躍した選手ですよね。全国的に名前の知れた甲子園のスターが入団すれば、キャンプから大きな話題になりますし、観客動員にも繋がります。地元出身の選手を重視したい球団もあるようです。野球選手は人気商売ですから、ある程度は仕方がないところがあります。現場のスカウトからすると、実力以外の要素で評価が変わるのは避けてもらいたいですよね」
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