開幕迫る「アジア競技大会」、“代理店依存”“権威主義的な体質”からの脱却で成功を収められるか 大会が目指す「アウェーの選手をゼロにする」の意味

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アウェーの選手をゼロに

 相変わらずビジネスファーストの体質が抜けないOCAをよそに、谷岡学長は独自の風を巻き起こそうと、数年前から声を上げていた。

「もっと重要な意義や役割がスポーツにはあります。私たちは自分たちにできる方法で、“選手ファースト”の大会をみんなで盛り上げ、交流を深める方法を一緒に考えて来ました。いろいろやりたいことはあったのですが、なんとか二つ、実現できました」

 二つのうちの一つは、「大学生ボランティアの活躍」だという。

 愛知には県内にある52の大学が参加する「愛知学長懇話会」がある。同会のホームページを開くと、トップページにこう表示されている。

《公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会と愛知学長懇話会は、2023年6月16日に連携協定を締結しています!》

 愛知学長懇話会とは《大学トップによる自由で率直な意見・情報交換の場》《愛知県下の国公私立大学の枠を超えて連携し、学術の向上発展に資するとともに、新しい時代と社会に生き、貢献できる人間を養成する大学人として集い会員相互の親睦を図り、愛知の文化発展の基礎エネルギーを蓄積し、発信することを目的として、平成5年10月に設立されました。》と記されている。谷岡学長はこの会に提案し、ボランティアを希望する県内のすべての大学生に扉を開いた。今回は約5000人以上が参加するという。

 もうひとつは、市民全員で参加者を応援する態勢を作り、「アウェーの選手をゼロにする」取り組みだ。谷岡学長に話を伺った。

「海外から参加するすべての選手に“アウェー感”を抱かせない。たとえ自国からの応援がひとりもいない国の選手であっても、“ホームで試合をしているような会場のムード、応援態勢を作りたい”、そう考えました。これはすべての競技でなく、私が愛知県レスリング協の会長を務める関係でレスリングの競技会場での実施が実現できました。

 例えば、大府市内の小中学生、うちの幼稚園の園児に、参加する45ヵ国・地域
の旗に色を塗ってもらいました。会場でこの旗を配って応援します。観客席と選手が一体になれたら素晴らしいでしょう。子どもたちに馴染みの薄い国の旗に触れてもらうことも意義があります。絵を塗る様子を見に行ったら、『45カ国、43競技!』とか、『がんばってね!』とか、それぞれが思いを込めながら、まるで自分もアジア競技大会に参加するような感じで塗ってくれていました。

 12日に聖火リレーが大府市内を走る時には園児たちがこの旗を振って応援します」

 脱代理店の新潮流に向けて、「どうやって手作り感が出せるか。ぜひ若者たちの参加を促したい」と願う谷岡学長は、実はもうひとつのサプライズを用意している。

「9月30日に始まるレスリング競技のオープニング・セレモニーで、至学館大学の創作ダンス部と岡崎大学・岡崎短期大学のダンス部、至学館大学の体操競技部とレスリング部がチームを組んで、完全オリジナルのダンス・パフォーマンスを披露します。

 スポーツ大会で大切なのはやっぱり『交流』です。スポーツ大会を原点に戻したい。国際大会を開くと多額の税金が使われ、地元の人たちに開催費用のツケが回るようなやり方は変えなければいけない」

 競技の舞台裏では、新たな時代を創るチャレンジにも熱が込められている。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集部

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