「ガムテープを渡されて“女を縛れ、目も口も塞げ”」と…夜な夜なカップルが利用する「ホテル」で起きた難事件を昭和の週刊誌記者はどう取材したか
「ホテル代を置いていってくれ」
一方、S記者も、警察署の副署長(広報担当)に会い、粘りに粘って、事件の詳細をかなり聞き出していた。
「その結果、さすがに8組すべてとはいきませんでしたが、3組ほどの被害者に会うことができました」
もちろん、誰もが最初は知らぬふりや取材拒否だった。だが、H、S両記者のインタビューに、みんな次第に語り出した。たとえばある男性は、
〈「犯人が入って来たのには、全然気がつかへんやった。そらなあ、やってる最中、あんた、誰か人がおらへんかときょろきょろするか? 風呂からあがって一戦やって、ほう疲れた、寝よか、いう時に、“騒ぐな”ときたんや。刑事の話やと、犯人は、隣の部屋の壁に耳をあてて、こっちのことを聞いてたらしい。たぶん、ずっと覗かれてもいたんやろな。それで、終わったから、“騒ぐな”になったんやろなあ」〉
と、まるで自慢話のように語っている。賊は、男女を脅したり、縛ったりしたうえで、財布から現金を抜き取って去って行くパターンだ。なかには「ホテル代を置いていってくれ」と懇願され、ごていねいに7500円を返してから消えたこともあった。
だが、20代前半のある男性被害者の話は、あまりに気の毒である。
〈「ガムテープを渡されて“女を縛れ、目と口も塞げ”といわれました。その時は、ただもう怖いだけで……。彼女に悪いというような考えも及ばなかった。いわれるままに、体が自然に動くんです。彼女もされるまま。いう通りにしたら、今度は僕が犯人から手を縛られて、目と口もベタッと塞がれてしまった。それで、ベッドの中に転がされて、フトンをかぶせられたのです」〉
その間、彼女がどういう目にあっているかは、まったくわからなかった。
〈「その……彼女が乱暴されたというのなんか全然知らなかったし……それは後で警察から聞かされたんです。実はこうだった、と。ぼくは男として、本当に、彼女に悪かったと思っています。情けない。だから、できるだけあのことは忘れるようにして、彼女にも気にさせないように、スナックに行って飲んだり歌ったりしているんです」〉
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