発売前日に“新事実が発覚”して顔面蒼白…ネットニュースでは考えられない「昭和の週刊誌」の修羅場「これでもう精いっぱいだよな」

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「これでもう、精いっぱいだよな……」

 そしてヒコヤさんは、職人さんに向かって、土下座せんばかりに、「申し訳ありません! なんとかお願いします!」と頭を下げ、それらの瓶を、机のうえに、ガン! と置いた。実は、こういうときのために、編集部には、さまざまなお酒が何本もストックされていたのである。職人さんたちは、ヒコヤさんのあまりの勢いに圧倒され、とたんに表情を真摯に引き締めたという。

 だが、松田デスクは、校了時のゲラ(出来上がりに近い状態の“仮誌面”)を眺めながら、頭を抱えていた。記事タイトルは、もう変えられない。当時のタイトルは手描きだったし、タイトルの入った新聞広告や電車中吊りは、もうできあがっている。

 松田デスクは、すでに取材班の記者数人にも電話で連絡をとり、至急、最新情報を集めて、大日本印刷の活字部屋に電話で知らせるよう、指示を出していた。だがいかんせん、ついさっき流れ始めたばかりの話である。最新情報など、皆無だった。なかには、「どこで聞いても、そんな話、ないようですがねえ」と懐疑的な記者もいたという。

 だが、情報源は、現職の自民党大物議員である。間違いはない。かといって、いつまでも最新情報を待っているわけにもいかない。なにしろ、印刷製本を途中でストップさせているのである。このままでは、配送を請け負うトラックにも影響が及び、配本~発売が遅れる可能性もある。

 結局、松田デスクは、最後の2行だけを差し替えることにした。「ヒコヤさん、これでどうですかねえ……」。

〈ところで今、中川氏の死は自殺だという話が流れてきた――。〉

 ここは、当初(正確な文章は、いまでは不明だが)〈政治家は、生と死の紙一重の間をさまよう〉といったニュアンスの結びだったという。

 ヒコヤさんは、この新しい2行を確認し、「そうだな。いまはもう、これで精いっぱいだよな。これでいこう。松っちゃん、ありがとう」とOKを出した。そして、営業担当者や職人さんたちに向かって「これでお願いします」と頭を下げた。関係者が活字部屋に集まってから、30分とたっていなかった。そして、あっという間に2行が組み直され、すぐに刷版にまわされ、印刷は再開した。

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