「おぢから大金をだまし取りつつ恨まれない方法」…中年男性を喰いモノにした「頂き女子りりちゃん」事件をビジネス的観点から読み直す

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“ホス狂い”のバイブルに

 蓄えや資産があれば、この借金も返済できるが、最初から何も持たない、親兄弟にも頼れないりりちゃんのような女子は、借金地獄にまっさかさまだ。借金を返すために、夜の仕事を掛け持ちする羽目になり、よりリスクの高い仕事に手を染める女子も多い。もともとホストクラブ通いの激しい女子たちの多くが接待を伴う夜の仕事に従事しているが、そこから身体を売る仕事への「転身」を強いられるケースもある。悪質なホストクラブの場合、売掛金回収のために、客に身体を売るのを勧めることも稀ではない。

 だが、りりちゃんが「ただ者ではない」と思えるのはここからだ。風俗やマッチングアプリで知り合った中高年の客(おぢ)たちの恋愛感情を利用して効果的にお金を引き出すための「テクニック」(りりちゃん用語でいえば「マジック」)を開発・マニュアル化し、自らそれを実践すると同時に、自身と似た境遇にある18、19歳から20代の女子(多くがホストクラブ依存症)をターゲットに、note(SNS)などを通じて売価3万円前後でこれを販売したのである。“ホス狂い”の女子たちにとってはまさにバイブルのような手引き書に思えたはずである。それほどまでにこのマニュアルは良くできていた。

 彼女が“頂き女子りりちゃん”を自称するようになったのは2022年頃。この頃には自らの経験則を整理した独自のマニュアルはすでに完成済みで、「お金を引く」「詐取する」という「悪女」のイメージを大幅に変える「頂き女子」という言葉を使って“頂き女子りりちゃん”と名乗り、『1ヶ月1000万頂く頂き女子りりちゃんの【みんなを稼がせるマニュアル】』というタイトルを付けた「詐取の手引き書」を販売するにいたった。無論、このマニュアルが詐欺幇助になるという違法性は微かに認識していたようだが、深刻には考えていなかったらしい。

<DV毒親育ち高卒勉強できない昼職飛んで20歳からホス狂いになり4年間ずっっと歌舞伎町のホストクラブに通ってる元ホームレス滞納しまくり社不ヴぉんなツイッタラー>という自己紹介(意味不明語もあるが理解はできる)に始まるこのマニュアルは実に簡潔で明解、ホストクラブ専門語は頻用されてはいるが、軽妙でリズム感のある「りりちゃん節」ともいえる文体は一貫している。筆者のような「おぢ世代」が読んでも感心するほどだ。

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