その分野の「最高峰」を見ておくことこそ重要…クリスティーズ社長が語る「真贋」を見極める力とは

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 世界的オークション会社の東洋美術部門スペシャリストを長らく務めてきたのが、クリスティーズ・ジャパン代表取締役社長の山口桂氏だ。
 無数の歴史的名品やトップコレクターと接してきた経験を持つ、当代きっての「アートの目利き」に、アートと楽しく付き合いながら美意識を磨く方法について伺おう。【山内宏泰/ライター】

※新潮社がお届けする教養/情報系YouTube番組「イノベーション読書」で公開されている動画内容を、再構成したものです。

日本美術の魅力は「用の美」にあり

 東京生まれの山口桂氏は、大学卒業後の1992年にクリスティーズへ入社。日本・東洋美術のスペシャリストとして活動し、幾度となくビッグセールをおこなってきた。2018年からはクリスティーズ・ジャパン社長として、経営手腕もふるっている。

 オークションという言葉自体は耳慣れているが、アート・オークションに参加したことのある向きは、まだまだ少ないだろう。実態はどんなものなのか。山口氏が語る。

「インターネット・オークションや競売などでおなじみかもしれませんが、オークションとは何らかの売り物に対して皆で競りをして、最高値をつけた人が買えるシステムのことです。私が勤めてきたクリスティーズは英国発祥のオークション会社で、創業は1766年。それより前の時代の美術品市場は、王公貴族や裕福な商人など、ごく一部の人による特権的なものでした。そこにオークションというシステムが登場して、だれでも美術品を買うことができるようになりました。

 公共の場で競りが行われ、落札結果がすべて公表されるというしくみは18世紀に確立し、そのまま現代にまで受け継がれています。ただし、真贋にかかわる面ではすこし変化があります。当初は出品物の真贋判定は、買う人にすべて委ねられていました。競りの前に出品物は公開されるので、自分の目でだれの作品か、状態はどうかなど確認しなければいけなかったのです。ですが、いまはオークション会社が真贋の保証をするようになりました。クリスティーズではオークション前に専門家が状態をチェックし、コンディションリポートを出し、オークションから5年間は真贋の保証をすることになっています」

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