その分野の「最高峰」を見ておくことこそ重要…クリスティーズ社長が語る「真贋」を見極める力とは

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「目を磨くことが重要な仕事」

 クリスティーズのようなオークション会社は「オークションハウス」と呼ばれる。絵画や彫刻といった美術品のみならず、宝石、ワイン、時計、国際的に著名なスポーツ選手のサイン入りボールなどのメモラビリアの分野など多様なジャンルを扱い、たくさんの「部屋」があることが呼称の由来だ。

 そんなオークションハウスにあって、山口さんが長らく従事してきた「スペシャリスト」とは、どのような職掌か。

「出品物の鑑定と査定を担うのが、スペシャリストです。その作品がいつごろつくられたもので、どんな作家の手によるものなのか、所有者の履歴はどうか、また保存状態は良好なのか……。それらを精細に調査・鑑定し、その情報をもとに価格をつけます。

 値付けをするとは価値を定めることですから、たいへん緊張しますし、プレッシャーがかかります。自分のミスだけで済むのならまだいいとしても、ひとつのミスがクリスティーズの名前に傷を付けることとなりますし、誤りが続けば個人としてもオークションハウスも信用を失くします。鑑定と査定は慎重に進めるとともに、日々勉強を重ねています。古い美術作品については年々さまざまな研究成果が出ますので、それらにまめに目を通します。関連の展覧会にもできるかぎり足を運びます。見たことのないものが出品される可能性はつねにありますから。いいものを見て「目を磨く」ことも、重要な仕事のうちなのです」(山口氏、以下同)

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