ニーズが増え続ける「新幹線による荷物輸送」の背景 JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州に取り組みを尋ねると…【5社の回答全文を紹介】
サービスの開始時期など
Q3：サービスの開始時期や経緯は？
【JR東日本】
2021年10月より「はこビュン」のサービス名称で展開していますが、新幹線による荷物輸送のはじまりは、2017年の「朝採れ新幹線マルシェ」という産直市イベントです。当初は地域の魅力アップが主な目的でしたが、現在は、社会的課題である「地方創生」「物流危機」「モーダルシフト」といった背景も踏まえて展開しています。
※「はこビュンQuick」においては、「はこビュン」の展開と同時期に、“お急ぎで運びたい”というニーズにこたえるために開始しました。
【JR東海】
東海道新幹線による貨客混載輸送は2020年10月より実証実験を開始し、2024年４月に東京・名古屋・新大阪の3駅を対象に「こだま号」の業務用室でサービスを開始しました。
もともと鉄道資産の活用の一環として、新幹線車内の業務用室の有効活用という位置付けで実証実験を行っていたのですが、JR各社の荷物輸送サービスに東海道新幹線が加わることで、ネットワークが完成して、より長い距離を運べるようになり、これまで結ばれていなかった地域同士が結ばれることで、新たな需要が生まれると考えて、サービスを開始することとしました。
【JR西日本】
定期・スポット輸送は、2021年11月から開始。「他企業・地域との共創価値実現」「地域活性化への貢献」を目的にスタート。
「荷もっシュッ！Quick」は、2025年7月から開始。「当日受付」「即日配送」を可能とし、お客様の「今すぐ早く運びたい」というニーズにお応えし、「物流の2024年問題」といった社会課題に対応することを目的にスタート。
「新幹線キャリサービス」は、2023年10月から開始。関西エリアから福岡エリア間の観光を手ぶらでお楽しみいただくことを目的にスタート。
【JR九州】
人流に依らない収益の確保や地域活性化、モーダルシフト等の社会的課題解決への寄与を目指して、2021年5月18 日より事業を開始しています。
荷物を運ぶ方法
Q4：新幹線の車内をどのように使って荷物を運んでいますか？
【JR東日本】
車内販売準備室という鍵のかかるスペースに格納して輸送しています。また、2025年4月18日から事業を開始している大口輸送（毎週金曜日に新青森～東京間を運行している東北新幹線臨時列車「はやぶさ50号」を使用）では、1・2号車を荷物専用車両として輸送しています。
【JR東海】
新幹線車内の業務用室を活用して荷物をお運びしております。
【JR西日本】
車内販売の在庫をストックしていた業務用室への搭載を行います。
【JR九州】
新幹線車両の車販準備室（未活用エリア）を利用しています。
利用者の反響など
Q5：利用件数や利用者の反響などを教えてください。
【JR東日本】
利用件数等の数字は非公表とさせていただきます。列車が持つ速達性や定時性、低振動性が活かされる「鮮度」が価値となる鮮魚・野菜・果物といった食料品・生鮮食品や、速達かつ安定した輸送ニーズのある血液や検体などの医療関係品、機械類・電子部品などを主に輸送しています。また、産直市イベントなどで販売する地域産品も輸送しています。珍しいところでは、観賞用の錦鯉や引越家財を運んだ実績もあります。
「はこビュンQuick」では、ギフト用のケーキを承ったことがあります。遠方に住んでいる大切な方のお誕生日にお送りするものだとのことでした。
【JR東海】
輸送実績は着実に増えており、具体的には医療関係品や精密機器部品、生鮮食品等をお運びすることが多くございます。
例えば7月には、名城公園に完成した愛知国際アリーナ（愛称：IGアリーナ）のこけら落としとなる大相撲名古屋場所において、その日の朝に両国国技館で作った名物の「国技館焼鳥」を場所中は毎日お運びしていました。
具体的な輸送件数については回答を差し控えさせていただきます。
【JR西日本】
これまで、生鮮（鮮魚等）や駅弁など、賞味期限の短い食料品類を多く輸送しており、生産者様からは商圏の拡大、また消費者様からは地方で採れた新鮮な食材を都心で味わうことができると、好評を頂いております。また昨今では、血液検体や新聞輸送を行っており、患者様に迅速かつ正確な診断・治療を実現できることや業務効率化等の観点から好評いただいております。
【JR九州】
輸送している荷物は、お客さまによりさまざまですが、生鮮品、日持ちのしない食材、お急ぎの機械部品、緊急を要する医療関係の荷物をはじめ、新聞の号外発行に伴う緊急輸送等も行っております。
新幹線ならではの高速・即日輸送、そして定時性は、既存の物流とは異なる新しい価値として、荷主さまからも大変ご好評をいただいています。
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