自衛隊「宇宙作戦隊」の理想と現実 ロシアや中国では「衛星を攻撃する兵器実験」も

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衛星を防護する必要

 そして、「戦闘領域」となった宇宙では現在、こうした高度な衛星を防護する必要に迫られています。

 画期的なのは、26年度中に静止軌道に配置する予定のSDA(宇宙領域把握)衛星です。現在、SDA衛星を有する国は非常に限定的であり、日本が第5次宇宙基本計画(23年)以降、製造を開始したSDA衛星を運用するようになれば、わが国の宇宙能力は新たな段階に入ったといえるでしょう。

 宇宙空間のどこにどのような物体が航行しているのかを観測し、その位置と軌道を確定することを宇宙状況把握(SSA)と言い、加えてその物体の能力や運用の意図までも把握することを宇宙領域把握(SDA)と言います。

 基本的に、ある衛星がどこに存在するかを正確に認識しているのは、衛星の運用者だけです。企業が衛星を運用する場合、その国の政府であっても位置情報を一元的に把握しているわけではありません。従って、宇宙先進国は、自国の宇宙利用に対する妨害の可能性を懸念して、主として地上配置の光学望遠鏡やレーダーで軌道の状況を観察しています。

 ごくまれには、重要な軌道近辺に他国の衛星の動きを監視する衛星を置いて、宇宙から状況を監視するという方式を取る場合もあります。現在、そのような性能のある衛星の保有が確認されているのは、米ロ中に加えてカナダのみです。

米中は相互に接近監視

 米国では、国防上、静止軌道で自国の重要な衛星に近づいてくるなど、怪しげな動きを見せる外国衛星に対しては、その近傍まで自国の衛星を移動させ、搭載した電子・光学センサーなどを用いてその能力の程度を調べ上げています。

 米シンクタンクの報告によると16~18年にかけて8回、外国の衛星を接近監視したといいます。また、中国の研究者の報告(公表の意図は不明瞭)によると、23年には中国の衛星に13回以上接近したといいます。米中は相互に接近監視を行っているのでしょう。

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