自衛隊「宇宙作戦隊」の理想と現実 ロシアや中国では「衛星を攻撃する兵器実験」も
異形の存在
同社は、性能を度外視して数だけに注目するならば、22年以降は世界の衛星の過半数を所有。年間のロケット打ち上げ回数については、ここ数年米国全体の9割程度を占めるという異形の存在です。
たとえば昨年は、米国の153回の打ち上げのうちスペースX社の打ち上げは133回に上りました。ちなみに、昨年の世界全体の打上げ回数は253回。米国のロケット打ち上げ回数は、2位の中国66回の2倍以上になります。
これまで18、19年そして21年は、中国のロケット打ち上げ回数が最も多く、宇宙覇権国の交代の兆しではないかという評価もありましたが、スペースX社の躍進がそれを打ち消した形です。
スペースX社は別格としても、宇宙の特定部門を席巻し、自国を一躍特色ある宇宙先進国に押し上げた企業は他にも少なくありません。フィンランドのICEYE(アイサイ)社もその一例です。
そこで、現在、いずれの先進国も強靱な宇宙ビジネスの育成支援を図り、そのサービスを利用して自国軍隊の宇宙活動能力強化と、加えて経費節減を目指しているのです。
衛星を攻撃する兵器実験
日本も例外ではありません。昨年から宇宙航空研究開発機構(JAXA)を通じて、企業や大学の技術開発・実証、商業化を支援する「宇宙戦略基金」が始まりました。10年間で1兆円規模の支援が予定されています。
それ以外にも、特に中小の宇宙企業を育成するための基金や、経済安全保障推進法(22年)に基づく重要技術育成プログラム(「Kプロ」)基金などがあります。このようなさまざまな基金により、宇宙産業基盤の充実による経済力強化と、防衛力強化の好循環を作り上げようとする方策が取られているのです。
こうした状況の下で、「宇宙領域防衛指針」が計画する宇宙利用の目標をごく簡単にいうと、継続的な監視により敵国の標的を発見し、追跡する。それと同時に、その情報を自衛隊の現場に可能な限り遅延なく送ること。さらに日本の防衛にとって重要な宇宙システムを、敵の利用妨害から守ることといえます。
宇宙システムの利用妨害には、物理的な衛星の破壊や、サイバー攻撃などによる機能の破壊や損傷などさまざまな手段があります。軍事的な優勢を確保するために、ロシアや中国は、衛星を攻撃破壊するさまざまな兵器実験を繰り返しているとみられます。
それだけに、宇宙空間の利用が国の防衛に重要となればなるほど、他国からの妨害を排除して、宇宙利用を確保することに力を注がなければなりません。
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