ジョブズ、ゲイツも自身の子どものスマホ、タブレットの使用を制限 スマホの使い過ぎで「光過敏脳」が激増

ドクター新潮 ライフ

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「全く問題ない」はたったの28%

 最も驚いたのは、現在の光環境を全く問題なく感じている人は28%しかいなかったことです。しかも、一見、健康人の集団の中に予備軍が5割以上、病的な光過敏脳になっている方が2割弱いる……。これは由々しき状況です。さらに着目したのは、グレード2と3が20~30代に集中していた点でした(20名中17名)。小中学生の頃からパソコン、スマホ、タブレットが身近に存在していた世代です。光を発するディスプレイを直接見てきた期間が長いほど光過敏脳のリスクは上がるのではないか。そんな推測が成り立ちます。

 私たちは眼球(目)と脳の協力によって「モノを見ること」ができています。眼球を通して入ってきた情報は電気信号に変換され、視神経を通じて脳へ送られ、複雑につながり合うさまざまな神経回路、大脳のいろいろな領野・領域へ送り届けられます。パソコン、スマホ、タブレットの普及による、人類がかつて経験したことがない視覚の処理パターンは、すんなりと適応できるものではなく、過度のストレスとなり、神経回路、大脳の領野・領域に不具合を生じさせます。脳は場所ごとに担う役割が異なるため、どこに不具合が生じるかで、主となって現れる症状が異なるのです。

MRIでは分からない

 例えば、光や皮膚感覚など感覚刺激を調節している場所に不具合が生じれば、生活空間の光量でも過剰にまぶしく感じたり、衣服がこすれただけでも痛みを感じたりします。まぶたの動きに関連する脳の神経回路に不具合が生じれば、まぶたが開けづらい・開けられないといった眼瞼けいれんが生じやすくなります。

「まぶしい」という表現ひとつ取っても、その感覚は多様です。実際、私が外来で耳にする光過敏脳の方々の訴えは、「まぶしい」という直接的表現だけではありません。「じりじりと染みてくる耐え難い感覚」「光を見ると目が吐きそうになる」「頭の中がむにょむにょする感じ」「眉間を押さえ、目に力を入れたくなるような異常な感覚」「目の奥でタコ糸が引っ張られすぎてぷつんと切れた感じ」などなど。これでは、光過敏脳に詳しい医師でなければ、「一体何を言っているのか」となりかねません。「まぶしさ」には、ドライアイや白内障など目の病気が原因になっているものもありますが、脳に不具合が生じている光過敏脳では、先ほど言及したように目の検査を行っても原因を突き止められないのです。

 脳の問題ならMRI(画像検査)で分かるのでは? そう思われる方がいるかもしれませんが、MRIは臓器や組織の構造や形態を画像化するもので、神経回路、大脳の領野・領域の不具合は分かりません。

 光過敏脳が厄介な点は、「遅延型」があることです。パソコン、スマホ、タブレットを見て、すぐに「まぶしい」「目が痛い」といった症状が出るわけではありません。だから、しばらくは見ていられる。ところが一定時間以上使用していると、「なんとなく目が疲れる/頭痛がする/疲れてくる」といった不快症状が出現する。そして、パソコン、スマホ、タブレットの使用をやめれば、多少はマシになる……。ここでパソコンなどの使い方を改めてくれれば病的な光過敏脳への進行を防げるのですが、なかなかそうはなりません。

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