目覚めると「2人の外国人男性」とベッドで添い寝…聡明な「女性薬剤師」はなぜタイでドラッグに溺れたのか

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 第1回【タイで「麻薬カクテル」に溺れる恋人を救いたい…容姿端麗な「女性薬剤師」を待ち受けていた“予想外の悪夢”】からの続き

 外資系の化学企業で研究員として働く葵さん(仮名・27歳)と知り合った筆者は、彼女から交際相手・恭介(仮名・25歳)について相談を受けた。恭介はタイ滞在中にケタミンや覚醒剤にはまり、日本に帰国後もSNSで密売人から違法薬物を購入し続けていた。その後、葵さんから「彼は自分で病院を受診して離脱症状を克服しました。ありがとうございました」との連絡が届き、一件落着かと思われた。しかし、それから半年後、今度は恭介が切迫した声で電話をかけてきたのである。【瀬戸晴海/元厚生労働省麻薬取締部部長】

 ***

「先生! 葵のことで相談があるのですが……」

 恭介の声からは切迫した様子がありありと伝わってきた。何より葵さんのことが案じられたため、数日後に彼と面接することになった。葵さんから聞いていたとおり、恭介はきりっとした二枚目の好青年だ。血色がよく、口調もしっかりとしており、すっかり薬物から距離を置いていることが窺える。

 だが、その表情は終始、暗いままだ。

 ――どうした。別れ話か?

「とても話しづらいのですが……」

 ――葵さんに何かあったのか?

「実は、葵がヤーケーノムポン(ケタミンに他の薬物を混合したドラッグカクテル)に狂ってしまって。私に黙ってタイにも行って、パタヤで外国人にレイプされたようなんです」

 ――えっ! なんだって? ちょっと待て、ゆっくり説明してくれるか。

 先述したように、筆者は葵さんから恭介の薬物依存について相談を受けていた。その後、葵さんは恭介にこう迫ったという。

「いま薬物をやめなければ、捜査機関があなたを逮捕することになるって。そうなったら、あなたの会社や実家にも捜索が入るんだよ。先生が言っているんだから!」

 さらに葵さんが、「恭介は何もわかってない。薬剤師として言わせてもらうと、薬物というのはね……」と畳みかけると、恭介も売り言葉に買い言葉で反発した。「依存症のつらさがオマエにわかるか? 何が薬剤師だ、偉そうなこと言うな。俺の気持ちが知りたかったらキメてみろよ。それでオマエがドラッグをやめられたら、俺もやめてやるよ」。そう大声で言い放ち、激しい口論が展開されたという。

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