タイで「麻薬カクテル」に溺れる恋人を救いたい…容姿端麗な「女性薬剤師」を待ち受けていた“予想外の悪夢”

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世界に広がる「ケタミン」ブーム

 ここ数年、世界的に麻薬「ケタミン」の乱用が拡大し、大型密輸事件も急増している。お隣り韓国では数年前から“ケタミンブーム”が巻き起こっており、オランダから日本経由で密輸されたケタミン24キロ(約80万回分)が金浦空港で押収される事件も報じられた(7月28日付「聯合ニュース」)。台湾や香港、東南アジアでは、ケタミンはもはや覚醒剤やヘロインを凌駕する“メイン薬物”となりつつある。毎年数百キロが押収されるなど、その勢いは増すばかりだ。【瀬戸晴海/元厚生労働省麻薬取締部部長】

 ケタミンは「人、動物の麻酔医薬品」として使われるが、その密造品は「K」「スペシャルK」「スペシャルコーク」「K他命(ケタミン)」「キャットトランキライザー」「ジェットK」「キットカット」「スーパーK」「ビタミンK」などのストリートネームでクラブドラッグ、とりわけ幻覚剤として使用されている。

 粉末、錠剤、液体、切手状(紙片にしみ込ませたもの)及びシュガーポット(角砂糖にしみ込ませたもの)などの形状があるが、最も出回っているのは“粉末”だ。使い方は経口、注射、粘膜吸収などが可能。一定量を超えて摂取すると、身体が軽くなると同時に「自分が自分でないように感じる」、あるいは「自分の感情や身体から切り離されたように感じる」など、いわゆる離人感や現実感の消失といった解離性幻覚を覚える。

 この独特の効果が乱用者に好まれる一方、その危険性は極めて高い。

 人気TVドラマ「フレンズ」にも出演した俳優のマシュー・ペリーが、2023年にケタミンの過剰摂取による急性作用で亡くなったことは記憶に新しい。加えて、問題を深刻化させているのは、ケタミンがGHBなどと同じように「レイプドラッグ」として悪用されているからだ。

 ケタミンを過量摂取すれば“昏睡”や“記憶障害”を引き起こす。性犯罪者たちはターゲットにこれを摂取させて犯行に及んでいるのである。

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