タイで「麻薬カクテル」に溺れる恋人を救いたい…容姿端麗な「女性薬剤師」を待ち受けていた“予想外の悪夢”
「病院から警察に通報されることはありませんか?」
恭介もSNSを通じて薬物を手にしたのだろうが、それにしても状態が良くない。薬物使用の罪を問う以前に、命の危険に晒されていると言ってもいいだろう。筆者は葵さんにこう伝えた。
――このままだと発作的に自殺を図ったり、錯乱して事故を起こしたりする可能性もある。過量摂取した場合は、呼吸抑制で死亡することだってありうる。専門家なので知っていると思うが、ケタミンはPCP(フェンシクリジン)と同類の薬物だ。PCPほどではないにせよ、使用者を唐突に興奮、錯乱させてしまうことがある。これに覚醒剤の興奮効果が加わればどうなるか?想像を絶することが起きかねない。
「えっ、じゃあ、どうしたらいいでしょうか……」
――捜査機関に身柄を確保してもらうことが一番だが、本人に薬物を絶つ意思があるのなら、治療を優先するべきかもしれない。治療後はリハビリが必要になる。
「病院から警察に通報されることはありませんか?」
――ひとまずは病気の治療だから心配しなくてもいいだろう。不安なら私が一緒に彼を説得して、医療機関につないでも構わない。彼に会えるかな?
「はい、彼に話します。実は、先生と会うことは既に話しています。相当ビビッていました」
これで、この日の面接は終わった。葵さんからはその後に2、3度電話をもらい、「彼は自分で病院を受診して離脱症状を克服しました。ありがとうございました」という言葉が届いた。その言葉を聞いて「これは予想外の成果じゃないか」と筆者はひとり安堵した。
ところが、である。その半年後に事態は急変する。葵さんではなく、薬物にはまっていた恭介から予想外の電話が入ったのだ。
ドラッグの闇深さを思い知らされる事件――。第2回【目覚めると「2人の外国人男性」とベッドで添い寝…聡明な「女性薬剤師」はなぜタイでドラッグに溺れたのか】では、目を覆いたくなるような彼女の“その後”を伝えている。
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