「墓じまい」で法外な離壇料を請求されたらどうする? 専門家が教える「お寺ともめない」方法

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もう一方の当事者

 では、墓じまい・改葬を行う際、具体的にどう進めていけばよいのでしょうか。一般的に、次の10の手順を踏むことになります。

(1) 家族や親族の同意を得る。

(2) お墓のある寺院や霊園から墓じまいの了解を得る。

(3) 遺骨の有無・数を確認する。

(4) お墓のある場所を管轄する自治体から必要な書類を取り寄せる。

(5) 改葬先を決める。

(6) 石材店を決める。

(7) 改葬許可申請および許可証を取得する。

(8) 改葬元・改葬先などの関係者と日程調整を行う。

(9) 改葬元で閉眼供養を行って遺骨を取り出す。

(10) 改葬先に改葬許可証を提出して納骨を行う。

 この手順を間違わないのが大切だということを覚えておいてください。その上で、いくつかのポイントを押さえていきたいと思います。

 まずは「(1)」について。

「先祖代々のお墓をしまい、他に移すなんて罰当たりだと身内の反対に遭うのではないか」

 墓じまい・改葬を検討している人の中には、こんな心配をする人もいるかもしれません。しかし、私の経験上、墓じまい・改葬を巡って親族間でもめ事が起きるケースはほぼありません。

 先ほど説明した通り、承継者問題や檀家としての務めに関する悩みなどを抱えている人は少なくなく、また若い世代ほど宗教的なマインドが薄い傾向にあります。そうした中で、「墓じまい・改葬がイヤで反対するのなら、あなたがいまのお墓を承継し、維持管理費を払ってください。檀家としての務めやお墓参りも欠かさないように」などと言われ、“お墓を守る責任を負わされる”のは避けたいと考える人が多い。そのため、意外かもしれませんが、親族間でもめることは少ないのです。

離檀料を請求してくるお寺は怖い存在?

 それはお墓へのこだわりが希薄な若い世代に限った話ではありません。宗教的マインドが薄れていない高齢の人でも、先祖供養を大事にしているからこそ、無理なくお参りでき、お墓が荒れ果てる心配をする必要がない、納骨堂などの永代供養墓を望むケースが多い、というのが私の実感です。

 従って、もともと遺産相続を巡ってもめているため遺骨を誰が管理するかも争いになる、といった場合を除けば、「(1)」が大きな問題になることはありません。

 問題は「(2)」で、ここで「通知」ではなく「相談」が大事になってきます。

 墓じまいの「当事者」は、お墓の承継者側だけではありません。お墓を撤去される寺院や霊園も、もう一方の当事者なのです。

 ここでは分かりやすく、お寺を前提に話を進めます。もちろん、遺骨の所有権は承継者側にあるわけですが、他方、お寺がお墓を管理し、守ってきたのもまた事実です。

 墓じまい・改葬を特集するテレビのワイドショーなどでは、檀家から離れる「離檀」が事実上セットとなる墓じまいをお寺はとても嫌がり、そのためもめ事になりやすい、という点が強調されがちな印象を受けます。その上、離檀料を請求してくるお寺は怖い存在である、と。

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