5人に1人が経験! 「めまい」に効く就寝方法と食生活テクニックを専門家が指南

ドクター新潮 ライフ

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どの施設でもトップ

 60代以降の女性(14年から16年の新患患者219例)に絞ると、66.2%、実に3分の2がこのめまいだったのです。さらにその中の「原因不明(219例の15.5%)」の患者さんに関して、より細かい検査を行うと、半数が良性発作性頭位めまい症に該当。つまり、60代以降の女性ではほとんどが良性発作性頭位めまい症という結果でした。

 そもそも、この良性発作性頭位めまい症は、どの施設で統計を取ってもめまいの種類トップの座を占めます。当センターで原因不明の患者さんに多くの良性発作性頭位めまい症が含まれていたこともあって、治療に結び付いていない患者さんはもっと多いのではないかと考えられます。

 良性発作性頭位めまい症は厄介な病気です。耳石の粒はとても小さく、画像診断ができません。耳石はおよそ10万粒あり、いつ、どれくらい剥がれるのかも分かりません。毎日少しずつ剥がれるケースもあれば、しばらく剥がれなかったものが突然大量に剥がれるケースもあります。剥がれた耳石が少量の場合は、良性発作性頭位めまい症の指標である「眼振(眼球が無意識に水平あるいは上下に動くこと)」が確認できないこともあります。そのような事情から「原因不明」のほか「ストレス」「心のもちよう」「心因性」とされてしまっている人もかなりいるのです。

 また、「グルグルするめまい(回転性めまい)は耳の病気」「フワフワするめまい(浮動性めまい)は脳の病気」と区別されがちですが、これも正しい情報ではありません。耳石が大量または一気に三半規管に入り込めば激しくグルグルする回転性のめまいが生じますし、三半規管の耳石が少量であればフワフワした浮動性のめまいになります。

治療によるめまい

 さらに、現在行われている主な治療は、個人差はあるものの、劇的な効果をもたらしにくい。めまい止めの薬は、ほとんど効かない人もいます。頭を動かし耳石を元の位置に戻す「浮遊耳石置換法(エプリー法、ブラント・ダロフ法など)」は、治療自体がめまいを生じさせるので、患者さんによってはトラウマになるほどつらい。その上、必ず成功するものではなく、耳石が一部でも三半規管に残ると、めまいは続きます。良性発作性頭位めまい症を繰り返している人では、その都度、“治療によるめまい”を乗り越えなくてはならないのです。

 改めてメカニズムを解説すると、良性発作性頭位めまい症は次の三つのステップを踏んでめまいが生じます。

(1)耳石が耳石器から剥がれる。

(2)耳石が三半規管にこぼれ落ちる。

(3)重力、または体を回転させる加速度で、耳石が三半規管の中で揺れ動く。

 耳石は、内耳にある平たい皿のような器官「耳石器」にくっついています。年を取るといろんなところが弱ってきますが、耳石や、耳石器をくっつけているゼリー状の物質も同様で、加齢とともに“接着度”が弱くなり、10万粒ある耳石が剥がれやすくなります。加齢が関係しているので、だれにでも発症し得るわけです。

 耳石は剥がれても、すぐに三半規管にこぼれ落ちるわけではありません。立っている姿勢の時、耳石器(皿)は地面に対して水平になっているため、耳石は耳石器の上に乗っています。ところが頭を動かすと“皿”は水平を保てず、剥がれている耳石がこぼれやすくなります。

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