「反日映画が3本公開!」 中国「反日キャンペーン」の真の狙いとは 櫻井よしこ×垂 秀夫
7月31日、中国では旧日本軍を題材にした映画が公開された。これを機に習近平主席は大々的に「反日キャンペーン」を展開するという。その企みをジャーナリスト・櫻井よしこ氏と前駐中国大使の垂秀夫氏が一刀両断。今後の日中関係に警鐘を鳴らす。
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櫻井 日中関係は今、新しい局面に入っています。習近平政権になってから、日中関係は根本的に変わったと思います。戦後80年を迎える今年の夏は、さまざまな歴史問題が再燃する恐れがあります。それに対して、わが国は一刻も早く対処する必要があるのに、国内政治が混乱している現状では、まったく構えができていないのではないでしょうか。
垂 そもそも最近の日中関係は好転していると思っている日本人が相当多い。メディア関係者や中国研究者からも、そういった声が聞こえる。例えば、今年の春には、自民党の森山裕幹事長や公明党の斉藤鉄夫代表などが相次いで訪中しました。対する中国は、日本からの水産物の輸入禁止を一部解除する方針を発表。大阪万博に合わせて中国の副総理が来日して、20年以上も続いていた日本産牛肉の輸入禁止を解除する方向に動いた。日本側からすれば改善の兆しだと捉えられていますが、私はこれは表層的で浅薄な見方だと思いますね。
〈そう櫻井氏に語るのは、2020年から23年末までの間、北京で駐中国大使を務めた立命館大学教授の垂秀夫氏だ。1985年に外務省に入省。自ら志願して南京大学に留学後、キャリア外交官としては異例の北京、香港、台北など中華圏に計8回も滞在。実に40年近くにわたって日中外交の最前線に携わってきた。中国では“モノ言う外交官”として恐れられ、現地の政財界に豊富な人脈を持つ「中国通」である。〉
“口約束”に喜ぶ日本人たち
垂 中国人は常に大きなフレームワークで物事を考えます。中国語で「大環境(ダァーフゥァンヂィン)」、日本語で言えば、大所高所の観点からマクロ的に戦略を立てるわけです。ところが、日本人は個別具体的なミクロ案件の解決にこだわる。中国人が見据える世界観を理解していないので、対米関係を考えて単に日本側にエサをまいているに過ぎない出来事でも“好転している”と錯覚してしまうわけです。
櫻井 垂さんがおっしゃったことは非常に大事ですね。訪中した森山幹事長は九州・鹿児島の選出です。地元の畜産業のことを考えれば、牛肉の輸入解禁で彼の顔が立つ。でも同時に中国は東シナ海、台湾海峡などで、大規模な軍事演習を行い日本や台湾を恫喝し続けています。また日本の領空を中国軍機が頻繁に侵犯している。彼らは“尖閣の空は中国の領空”だとして、そこに第三国の日本が侵犯したからわれわれが追い返した、というふうに「認知戦」を激しく仕掛けている。こういった現状を見ると、目の前の水産物や牛肉の解禁、それもまだ実行されておりませんけども、その“口約束”に喜ぶ日本人たちは、自らわなにはまりにいっているようにしか思えません。
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